超音波画像観察日記 20190214 ①~⑤

超音波画像観察日記 20190214 ①~⑤

超音波画像観察①

観察1超音波画像観察装置で正常な骨と軟骨を描出してみました。骨は様々な組織を描出するうえで、ランドマークになることが多いので、どのように見えるかを知っておくと役立ちますよ。さて、画像は大腿骨滑車を短軸で描出したものです。矢頭が大腿骨滑車の軟骨下骨、つまり骨です。骨はこのように高輝度で描出されます。これはどの部位の骨でも同じように高輝度(高エコー)で表されます。そして矢印は、関節軟骨を描出しています。関節軟骨はご存知の通り、硝子軟骨です。硝子軟骨は細胞成分が少なくて約7割は水分です。よってエコー画像ですと低輝度(低エコー)で描出されることになります。

☆ 骨 = 硬い媒質 = 高輝度 = エコー画像上の色で言えばはっきりした白色
  関節軟骨 = 多くは水分 = 低輝度 = エコー画像上の色で言えば黒色

超音波画像観察②

観察2実際の症例で骨の観察をしてみましょう。症例は15歳男子中学生でサッカーのクラブチームに所属されている患者さんです。サッカーの試合中に相手選手の足を踏んでしまった際に右足が強制背屈されて負傷されました。脛骨内側下端部に強い圧痛を認めたためにエコーによる観察を行いました。画像は初診時のものです。骨の連続性が断たれているのが確認できますね(矢頭)。これが骨折線です。ここでは静止画ですのでわかりにくいですが、動画撮影しますと、骨折線が斜めに移動することも確認できます。これは斜骨折と予想できます。関節面へ至る骨折線がエコーでも十分に確認できましたの、これは関節内骨折と判断し、直ちに整形外科へ転医してもらいました。診断結果はエコーで判断した通りで、即手術適応となった症例です。

☆ 骨の異常所見は骨皮質の連続性が不連続となる箇所を注意してみてみましょう

超音波画像観察③

観察3超音波で正常な靭帯および腱を描出してみました。画像は足関節の腓骨と距骨をつなぐ前距腓靭帯(上)と膝伸展組織の膝蓋腱(下)です。どちらも線状高エコーが層状配列しているのがわかると思います(矢印)。このように長軸画像において線状高エコーが層状配列していることをfibrillar patternといいます。このfibrillar patternをきれいに描出するには、解剖学的な知識と、靭帯や腱に平行にプローブをあてられるように、ちょっとしたプローブワークがポイントですね。画像を描出して読み取るうえでは異方性というアーチファクトも注意したいところですね。
☆ 異方性については超音波観察④を参照してね!

超音波画像観察④

超音波観察③で異方性っていうワードがでてきました。これはエコー画像上に生じるアーチファクトという虚像のことです。つまり、ないものが写ったり、あるものが写らなかったりしてしまうのです。アーチファクトにもいろいろありますが、ここでは異方性についてお話しします。異方性っていうのは、実は運動器領域特有のアーチファクトなんですね。どのようなものかといいますと、靭帯や腱に垂直に超音波が入射しないとおこるアーチファクトで、本来、高エコーでfibrillar patternが描出できるはずなのに、垂直に入射していないと低エコーとなり、組織の断裂や欠損などの異常所見として見誤ってしまうことがあるんです。下の左の画像は左手指の屈筋腱の長軸画像です。矢印部分は低エコーであたかも腱が欠損しているようにも見えますね。右の画像も手指の屈筋腱の短軸画像です。ちょうどMP関節近位のところです。Aは腱に垂直にビームがあたっているため高輝度で描出されていますがBでは黒く抜けて描出されていませんね。これらが異方性といわれるアーチファクトです。異方性と思われる画像が描出されたら、プローブの角度を調整してみることが必要です。

超音波画像観察⑤

2歳の女の子が左手が痛いとのことで来院されました。どうやら階段から落ちたとのことです。全身状態は元気で良好でしたが、左手を持ち上げようとすると痛がって嫌がるしぐさをします。肘は、鎖骨は…大丈夫なようです。手関節の橈骨下端に圧痛を認めましたので、ここを中心にエコー観察を行いました。すると橈骨下端の骨の連続性が断たれています。この所見は間違いなく若木骨折ですね。おそらく階段から落ちた際に手を強くついたのでしょうね。シーネで固定して約2週間で完全に治癒しました。

(公社)滋賀県柔道整復師会 川戸 典知

 

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