⑥「学んでみよう(国試対策)」-2019年9月号

⑥「学んでみよう(国試対策)」-2019年9月号

今月は【柔道整復学理論】10問を出題させていただきます

9月分 【柔道整復学理論】問題№1~10(協力 ジャパン国試合格)

問題1 65歳の男性。段差で左足を踏みはずして受傷した。来所時は足部の外側に皮下出血と限局性圧痛が著明であった。患部に軋轢音が触知されたため骨折と判断し、足関節を良肢位で副子固定し、医療機関へ継続施術の判断を委ねるために搬送した。 供覧された単純エックス線写真を以下に示す。受傷に関与した外力はどれか。

1. 前足部の回外強制力
2. 短腓骨筋の牽引力
3. 足部の伸展強制力
4. 後脛骨筋の牽引力

問題2 7歳の男児。柔道の練習中、右母指が畳の溝に引っ掛かり負傷したため来所した。外観上、母指は内転変形を呈し、右母指の基節骨骨幹部に強い圧痛を認めた。受傷時の外観と整形外科による単純エックス線写真を以下に示す。この症例で正しいのはどれか。

1. 母指MP関節の脱臼が疑われる。
2. 母指の成長障害に注意が必要である。
3. 運動開始までに3か月を要する。
4. 母指を牽引しながら外転して整復する。


問題3 3歳の男児。歩行中に転倒しそうになり、母親が右手を引っ張り上げた直後に泣き出し、以後、右上肢を全く使わなくなった。患肢を観察すると、右上肢を下垂し、肘関節軽度屈曲位、前腕回内位をとっている。右上肢の関節に、熱感、腫脹、変形はみられない。施術後の保護者への説明で正しいのはどれか。

1. 成長に伴い肘関節が変形してくる可能性がある。
2. 繰り返し発生する場合があり手を引っ張らない。
3. 単純エックス線で整復の確認を要する。
4. 2週間程度の固定を要する。

問題4  19歳の男性。大学の野球部に所属している。1年前、バイクで走行中に転倒した際、右肩関節脱臼を受傷した。受傷後、全力で投球すると、右肩関節が脱臼するようになった。最近になり、右肩部に痛みを感じるようになったが、練習を継続していた。その後も、疼痛が改善しないため来所した。日常生活では、寝返りをすると右肩が抜けそうになると訴えている。初検では、右肩関節の自動運動は可能であるが、肩関節90°外転・外旋の肢位をとると不安感を訴える。他の方向では不安感を認めなかった。この疾患で考えにくいのはどれか。

1. 肩関節の不安定性は片側性である。
2. 肩関節外転60~120°で疼痛が生じる。
3. 上腕骨頭の後外側部に骨欠損を認める。
4. 肩甲下筋の筋力訓練を行う。

問題5  16歳の女性。バレーボールの練習中、右手小指にボールがあたり受傷した。受傷後3日は湿布を貼り様子をみていたが4日目に写真の変形に気づき来院した。来院時の患部の外観を以下に示す。考えられるのはどれか。

1. DIP関節背側脱臼
2. PIP関節掌側板損傷
3. 正中索断裂
4. 深指屈筋腱損傷

問題6 30歳の男性。昨夜の飲酒後に帰宅し床で寝たところ、起床時に手の痺れを感じたので来所した。来所時に手部は図のようになっており、感覚障害は母指と示指の間に認めた。手関節の背屈運動は出来ずに母指と示指に力が入りにくい。この疾患で麻痺しているのはどれか。

1. 母指内転筋
2. 短母指伸筋
3. 浅指屈筋
4. 虫様筋

問題7  50歳の女性。半年前に自宅の玄関にて右手掌部を衝いて転倒した。転倒後、右手関節部に著明な変形を認めたため、整形外科で単純エックス線検査を行った。結果、骨折と診断され整復後に固定が行われた。骨折は治癒となっているが、日常生活の中で特に家のドアノブを捻る動作で手関節の疼痛がある。再度整形外科より供覧された単純エックス線写真のシェーマを示す。疼痛の原因として考えられる疾患はどれか。

1. 三角線維軟骨複合体損傷
2. 尺骨茎状突起骨折
3. 反射性交感神経性ジストロフィー
4. 手根管症候群

問題8 25歳の男性。野球でボールを捕球する際に左環指を突き受傷した。軽度な痛みが出現したため受傷後直ちに来所した。DIP関節に軽度な腫脹と圧痛を認めた。自動運動によるDIP関節の屈曲は可能で、屈曲位からの完全伸展が不能であった。患者にDIP関節の完全伸展を指示した際の外観写真を以下に示す。最も疑われるのはどれか。

1. 中節骨頸部骨折
2. へバーデン(Heberden)結節
3. 終止腱断裂
4. DIP関節脱臼


問題9 30歳の男性。学生時代にはサッカー部に所属していた。職場ではデスクワークが多く、腰に痛みを感じることが増えており、最近では寛解との周期が短くなってきたため来所した。立位の所見では、後屈時痛を強く認めるが、側屈や前屈時痛は認められず、指先床間距離(FFD)は+35cmであった。背臥位の所見では、ベッドと腰の間に隙間を認めたが、SLRテストでは疼痛が誘発されず、感覚の障害も認められない。膝蓋腱反射も正常であり、足趾の屈曲や伸展の筋力に左右差は認めなかった。腹臥位ではアキレス腱反射も正常であったが、FNSテストを実施するために膝関節を屈曲した際に左側で制限があり、更に屈曲しようとすると殿部が持ち上がってきた。再度既往歴を聴取する中で、学生時代のサッカーの試合中に相手選手と接触して左大腿部を負傷したことがあったとのことである。その左大腿部の負傷は腫脹や皮下出血も強く、1か月程度は膝関節を伸展位で、患部を包帯で圧迫していたとのことである。腰痛の原因が大腿部の負傷に起因していると考え、大腿部を精査すると、一部にしこり状の拘縮部位が認められた。拘縮が認められた筋はどれか。

1. 中間広筋
2. 内側広筋
3. 縫工筋
4. 大腿直筋

問題10 23歳の男性。小学校からサッカーを続けており、現在はクラブチームに所属している。最近になって足関節前面に疼痛が出現し、特に背屈強制で疼痛が著明に誘発される。外観上、変形や腫脹などの変化はみられない。過去に複数回、足関節捻挫の既往はあるが、今回の疼痛に関しては足関節捻挫の既往はない。最も考えられるのはどれか。

1. 三角骨症候群
2. 衝突性外骨腫
3. 有痛性外脛骨
4. 第1ケーラー病


回答 解説 コメント

問題1 
【解答】 1 【柔理】p.365-367
本症例の単純エックス線写真は、第5中足骨骨幹部の螺旋骨折である。この外傷の発生外力は内返しであることが多く、特に前足部に回外が強く作用した際に発生する。
2.短腓骨筋は第5中足骨基底部に付着しているため、第5中足骨基底部の裂離骨折に関与し、単純エックス線写真の斜位像で立方骨外側に裂離骨片様の骨を認めるが、本症例は余剰骨が多い患者であり、立方骨の豆骨(os peroneum)と推測される。
3.足部の伸展は背屈であり、内返しの要素に含まれていない。
4.後脛骨筋は足の舟状骨の内側面に付着しているため舟状骨粗面の裂離骨折に関与し、単純エックス線写真の正面像には骨片様の独立した骨を認めるが、皮下出血や限局性圧痛は外側に認められることから、外脛骨と考えられ、受傷の外力とは関係ない。 
※正答率57%(受験生1,892名)

問題2 
【解答】 4 【柔理】p.367-368
この症例は受傷原因、症状、外観、単純エックス線写真から、右母指基節骨骨幹部骨折と考えられる。1.母指MP関節の生理的相対関係は単純エックス線写真では正常であり、脱臼は否定できる。2.また、骨端軟骨損傷も見当たらず、成長障害は考えにくい。3.本症例は小児の骨折であり、母指基節骨の連続性が一部保たれていることから安定性も良く、3週間程度での骨癒合が期待できる。運動開始までに3か月は要さない。4.外観上、内転変形がみられることから、母指を外転し整復する必要がある。
※正答率15%(受験生1,892名)

問題3
【解答】 2 【柔理】p.275-276
年齢、発生機序、肢位から肘内障が考えられる。
1.変形や機能障害を残すことはなく、予後良好である。
2.繰り返し発生するものもあり、本損傷の発生機序を保護者に説明し、防止するために、手を引っ張らないように指導する必要がある。成長に伴って再発しにくくなり、6歳以降に発生することはほとんどない。
3.単純エックス線で確認できないため必要がない。整復時のクリック音や整復直後に上肢の自動運動を誘導することで確認する。
4.一般的に固定は必要としない。
※正答率98%(受験生1,892名)

問題4 
【解答】 2 【柔理】p.264-271【整形】p.184
本症例は、肩関節前方脱臼の既往があり、アプリヘンションテスト(肩関節90°外転位に保持し、外旋すると不安感を訴える。)が陽性で、肩部に違和感や不安感を訴えていることから反復性肩関節脱臼が考えられる。
1.反復性肩関節脱臼は、肩関節の外傷性脱臼後、再受傷により再脱臼を繰り返す疾患であり、肩関節の不安定性は片側性にみられる。一方で、動揺性肩関節では、両側性にみられる。
2.上腕骨頭の後外側部に骨欠損を生じる疾患としてヒル・サックス損傷があげられる。反復性肩関節脱臼では、ほとんどの症例でヒル・サックス損傷を認める。
3.肩関節外転60~120°の間に疼痛が生じる疾患として腱板断裂があげられる。
4.再脱臼の防止は、肩関節周囲筋の筋力訓練が有効とされている。
※正答率55%(受験生1,892名)

問題5 
【解答】 2 【柔理】p.317
右小指の外観写真よりDIP関節屈曲、PIP関節過伸展のスワンネック変形が観察される。スワンネック変形は、浅指屈筋腱断裂や終止腱断裂(マレットフィンガー)、掌側板の損傷などを放置すると発症する。発症メカニズムは、PIP関節が過伸展位となると、側索がPIP関節の運動軸より背側へ移動するためである。
3.正中索が断裂すると、ボタン穴変形が発症する。
4.深指屈筋腱損傷は、ジャージフィンガーともいわれ腱の断裂または付着部の裂離骨折によりDIP関節の自動屈曲が不能となる。
※正答率42%(受験生1,892名)

問題6 
【解答】 2 【柔理】p.306-307
本疾患は睡眠時の不良姿勢により発生する橈骨神経麻痺(Saturday night paralysis)を想定している。橈骨神経麻痺は上腕後方からの打撲、駆血帯や松葉杖の圧迫などによる持続的圧迫でも発生する。
図のように橈骨神経麻痺では「下垂手」を呈する。
1.母指内転筋は尺骨神経支配
3.浅指屈筋は正中神経支配
4.虫様筋は(橈側)尺骨神経・(尺側)正中神経支配である。
※正答率74%(受験生1,892名)

問題7 
【解答】 1 【柔理】p.235,309
図1は正常で、図1と図2を比較すると、問題の図2は尺骨が長く写っているのがわかる。半年前に骨折をしていて、かつ変形が著明であったことを合わせて考えると、半年前に橈骨遠位端部骨折を起こし治療をした。しかし短縮転位が残ってしまい、現在は相対的に尺骨が長くなってしまうことによって尺骨突き上げ症候群が起こっていると考えられる。また、ドアノブを捻る動作で疼痛がある、つまり前腕の回内回外動作で疼痛があることから、三角線維軟骨複合体損傷であると予想ができる。まとめると、半年前に橈骨遠位端部骨折を起こし骨折は治癒となったが尺骨突き上げ症候群になってしまい、結果として三角線維軟骨複合体損傷が起きたと考えられる。

問題8 
【解答】 3 【柔理】p.258-261,p.285-286,p.316
受傷原因と臨床上、骨折に比べ疼痛や腫脹、圧痛が軽度である。また、DIP関節の自動運動による完全伸展が不能であることから、選択肢からは、マレットフィンガーのⅠ型である終止腱の断裂であることが考えられる。
1.中節骨頸部骨折では中節骨頸部に強い圧痛や腫脹、転位がある場合は変形を伴う。
2.へバーデン結節はDIP関節の変形性関節症であり急性外傷ではない。
4.DIP関節脱臼は変形を認め、関節運動が困難である。 
※正答率86%(受験生1,892名)

問題9 
【解答】 4 【柔理】p.389-391
本症例は股関節の屈曲位拘縮が原因で、腰椎の前弯が増強し、徐々に腰の痛みが強くなり、頻度も増してきたものと推測される。立位の所見では後屈時痛が顕著で、前屈時痛は認めないが、FFDが+35cmなのは、腰椎の前弯増強に起因していると考えられる。背臥位でも特別な異常所見を認めないが、腹臥位では左股関節に尻上がり現象が認められている。大腿部の筋が屈曲位拘縮の原因となる場合には、罹患筋が2関節筋であることならびに膝関節の屈伸運動の主動作筋であることが必要であり、選択肢3の縫工筋よりは選択肢4の大腿直筋が膝関節の伸展を司っているため、主原因となる可能性が高い。また、大腿部の負傷時の応急処置で膝関節を屈曲していなかったことも大腿部の筋の拘縮を助長したものと推測される。
※正答率87%(受験生1,892名)

問題10 
【解答】 2 【柔理】p.410,413 第6版p.440
この症例は、競技歴、疼痛部位、疼痛誘発動作などから衝突性外骨腫が考えられる。衝突性外骨腫は繰り返される足関節の過度伸展により、脛骨前縁と距骨頚部が衝突し、骨棘を形成する疾患で、サッカー選手に多く別名フットボーラーズアンクルと呼ばれる。症例の多くは捻挫の既往が先行すると言われる。三角骨症候群は足関節後方の疼痛を、有痛性外脛骨は足関節内側の疼痛を主訴としており、鑑別が可能である。また第1ケーラー病は舟状骨の骨端症であるが、好発年齢は3〜7歳である。
※正答率50%(受験生1,892名)

 

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