⑫「学んでみよう(国試対策)」-2020年2月号 演習問題

⑫「学んでみよう(国試対策)」-2020年2月号 演習問題

今月は、2020年版 『必修問題』50問(2020年1月実施『第5回ジャパン模試』問題)より出題させていただきます。

2020年2月号 演習問題(協力 ジャパン国試合格)

問題1 インフォームド・コンセントについて正しいのはどれか。
1. パターナリズムを反映する。
2. 医療従事者の視点で説明する。
3. 施術後に保護者から同意を得る。
4. 患者の自己決定権を確保する。

 

【解答】 4 【社倫】p.50-53【法規】p.4-5
[必修]1.患者の権利 B インフォームド・コンセント
【問題の狙い】インフォームド・コンセントの概念を理解できる。
【解説】
1.パターナリズムとは、権威主義的・家父長的関係のことであり、「医師→メディカルスタッフ→患者」という一方通行的な関係のあり方で近年まで医療の基本構造として認識されていた。それに対して、インフォームド・コンセント(説明と同意)を施術に関する対話等に導入することは、「患者中心の医療」の実現を目指す倫理観を反映するといえる。
2.医療従事者の視点ではなく、患者側の視点で、患者本人が理解できる言葉で説明する必要がある。
3.原則、施術前に患者は医療従事者から説明と情報を受け、医療従事者は患者から同意を得ることとされている。なお、小児科領域では保護者へのインフォームド・コンセントだけでなく、当事者である子ども(未成年者)に対しても説明と同意が必要とするインフォームド・アセントが実践されている。
4.患者が自ら選択する自己決定権を確保するために、インフォームド・コンセントの実践が求められている。

 

 

問題2 医療事故で正しいのはどれか。
1. インシデントに該当する。
2. 刑事事件に該当することが多い。
3. 医療従事者の過失の有無を問わない。
4. 物損事故も含まれる。

 

【解答】 3 【法規】p.5-7
[必修]2.医療過誤とリスクマネジメント A.医療事故と医療過誤
【問題の狙い】医療事故と医療過誤の概要を説明できる。
【解説】
医療事故は、厚生労働省リスクマネージメントマニュアル作成指針で以下の様に定められている。
医療に関わる場所で、医療の全過程において発生するすべての人身事故で、以下の場合を含む。なお、医療従事者の過誤、過失の有無を問わない。
ア 死亡、生命の危険、病状の悪化等の身体的被害及び苦痛、不安等の精神的被害が生じた場合。
イ 患者が廊下で転倒し、負傷した事例のように、医療行為とは直接関係しない場合。
ウ 患者についてだけでなく、注射針の誤刺のように、医療従事者に被害が生じた場合。
1.一般に、医療事故に相当するのはアクシデントであり、インシデントはヒヤリ・ハットと同じ意味で用いられる。
2.刑事事件に該当することは少なく、民事事件が多い。
3.上記の定義の通り、医療従事者の過失の有無は問わない。
4.機器や設備の破損等の物損事故は含まれず、人身事故のみである。

 

 

問題3 黎明期の講道館と嘉納治五郎を支えた講道館四天王でないのはどれか。
1. 徳三宝
2. 西郷四郎
3. 横山作次郎
4. 富田常次郎

 

【解答】 1 【柔道】
[必修]3.柔道整復師と柔道 A.柔道の歴史
【問題の狙い】柔道の創始者を説明できる。
【解説】
いわゆる講道館四天王は、柔術家との試合などを通じ講道館の名を馳せ、嘉納治五郎と黎明期の講道館を支えた。講道館の入門順に、富田常次郎、西郷四郎、山下義韶、横山作次郎の四名である。徳三宝が活躍した時代は、四天王の時代よりさらに二十年ほど後のことである。

 

 

問題4 柔道の修行法のうち、投の形に含まれる技はどれか。
1. 出足払
2. 送足払
3. 大内刈
4. 払釣込足

 

【解答】 2 【柔道】
[必修]3.柔道整復師と柔道 B.柔道の理念
【問題の狙い】柔道の修行の方法を説明できる。
【解説】
嘉納治五郎は、形、乱取、講義、問答を柔道の修行法として挙げている。形のうち、投の形は、手技、腰技、足技、真捨身技、横捨身技の5系統から代表的な技を3本ずつ、合計15本で構成されている。
手技:浮落、背負投、肩車
腰技:浮腰、払腰、釣込腰
足技:送足払、支釣込足、内股
真捨身技:巴投、裏投、隅返
横捨身技:横掛、横車、浮技

 

 

問題5 柔道整復の業に該当するのはどれか。
1. 柔道整復師国家試験に合格した。
2. 柔道整復施術所を開設した。
3. 反復継続の意思をもって施術した。
4. 骨折の応急手当として投薬した。

 

【解答】 3 【法規】p.10
[必修]4.柔道整復師法 A.総則 イ.定義(第2条)
【問題の狙い】柔道整復の業を説明できる。
【解説】
「柔道整復師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、柔道整復を業とする者をいう。業とするとは、反復継続の意思をもって施術を行うことをいい、その施術の対価として報酬を目的とし、またはこれを現実に受けたか否かを問わないものとされている。また、反復継続の意思があるときは、必ずしも数人に対しまたは一人に対し数回施術を行うことを要せず、一人一回の施術を行った場合でも業として行ったことになる。
1.柔道整復師国家試験に合格した者が自動的に免許を受けるわけではないため、柔道整復を業とすることはできない。
2.柔道整復施術所とは、柔道整復師が柔道整復の業務を行なう場所である。柔道整復施術所を開設したこと自体は、柔道整復の業には該当しない。
4.柔道整復師は、薬品を投与し、若しくはその指示をする等の行為をしてはならない。

 

 

問題6 柔道整復師免許で正しいのはどれか。
1. 免許を与えるとは免許証を交付することである。
2. 法人として柔道整復師の免許を申請できる。
3. 免許の申請により免許証が交付される。
4. 免許取り消し処分を受けても免許証を返納するまで柔道整復業務ができる。

 

【解答】 3 【法規】p.11-15
[必修]4.柔道整復師法 B.免許 エ.免許証
【問題の狙い】柔道整復師法の免許の概要を説明できる。
【解説】
1.柔道整復師の免許を与えるとは、名簿に登録されることであり、名簿に登録されることで柔道整復の業務ができる。
2.柔道整復師免許は自然人のみに与えられ、法人には与えられない。また、免許を他人に貸与、譲渡や相続はできない。
3.免許証の申請という手続きは無く、国家試験合格後に免許の申請をすることで免許証が交付される。
4.柔道整復師の免許の取り消し処分を受ければ、取り消された日から業務ができない。免許証は処分を受けた日から5日以内に返納しなければならない。

 

 

問題7 柔道整復師国家試験の合格証書を交付するのはどれか。
1. 文部科学大臣
2. 厚生労働大臣
3. 都道府県知事
4. 柔道整復師養成施設長

 

【解答】 2 【法規】p.22
[必修]4.柔道整復師法 D.試験 エ.合格証書等
【問題の狙い】柔道整復師国家試験の合格証書の交付を説明できる。
【解説】
柔道整復師国家試験に合格した者に「合格証書」を交付するのは厚生労働大臣(指定試験機関)である。この際、試験に合格した者が交付を申請する必要はない。
なお、「合格証明書」の場合は、試験に合格した者は、厚生労働大臣(指定登録機関)に「合格証明書」の交付を申請することができる。指定登録機関は、試験に合格した者の受験番号、氏名、生年月日、住所、試験に合格した年月及び合格証書の番号を記載した書類を交付するものとされている。
柔道整復師免許に関することは厚生労働大臣(指定試験機関)、施術所に関することは都道府県知事が管理している。

 

 

問題8 施術所の構造設備で正しいのはどれか。
1. 消毒設備を有すること。
2. 専用の待合室を有すること。
3. 室面積の7倍の窓を有すること。
4. 多目的トイレを有すること。

 

【解答】 1 【法規】p.30
[必修]4.柔道整復師法 F.施術所 イ.構造設備等
【問題の狙い】施術所の構造設備を説明できる。
【解説】
施術所の構造設備等の概要は以下の通りである。
施術所の構造設備
[施行規則第18条]
① 6.6m2以上の専用の施術室を有すること.
② 3.3m2以上の待合室を有すること.
③ 施術室は,室面積の7分の1以上に相当する部分を外気に解放し得ること.ただし,これに代わるべき適当な換気装置があるときはこの限りでない.
④ 施術に用いる器具,手指等の消毒設備を有すること.
1.正しい。
2.待合室に「専用」と言う規定はない。
3.上記、表の通りである。
4.多目的かどうかにかかわらず、トイレを設置することは規定されていない。

 

 

問題9 柔道整復師法の規定で50万円以下の罰金に処せられるのはどれか。
1. 厚生労働大臣が命じた業務の停止命令に違反した者
2. 虚偽又は不正の事実に基づいて免許を受けた者
3. 施術所の開設の届出をしなかった者
4. 広告の制限に違反した者

 

【解答】 2 【法規】p.37-40
[必修]4.柔道整復師法 H.罰則 ア.違反行為と罰則
【問題の狙い】柔道整復師の違反行為と罰則を説明できる。
【解説】
1.3.4.は30万円以下の罰金に処せられるもの(法第30条)である。
1年以下の懲役又は50万円以下の罰金(法第26,27,28条)
① 指定登録機関役員等の秘密保持義務違反
② 指定登録機関又は指定試験機関の事務停止命令違反
③ 不正の採点をした柔道整復師試験委員
50万円以下の罰金(法第29条)
① 医師以外の者で、無免許で柔道整復を業とした者
② 正当な理由なしに業務上知り得た人の秘密を漏らした柔道整復師(柔道整復師の免許を喪失した後であっても処罰される。ただし、被害者の告訴がなければ公訴を提起することができない親告罪である。)
③ 虚偽又は不正の事実に基づいて免許を受けた者

 

 

問題10 施術所と診療所のどちらにおいても広告できるのはどれか。
1. 通訳の配置
2. 従事する者の略歴
3. 治療効果に対する体験談
4. 駐車場

 

【解答】 4 【法規】p.73-75
[必修]5.関係法規 B.医療法
【問題の狙い】柔道整復師法と医療法との広告の制限の相違を理解できる。
【解説】
選択枝の広告の可否をまとめると以下の様になる。
柔道整復師法 医療法
1.通訳の配置 × ○
2.従事する者の略歴 × ○
3.治療効果に対する体験談 × ×
4.駐車場 ○ ○
4.駐車場設備は、施術所と診療所のどちらにおいても広告できる。

 

 

問題11 医療提供施設でないのはどれか。
1. 調剤を実施する薬局
2. 介護老人保健施設
3. 医療安全支援センター
4. 特定機能病院

 

【解答】 3 【法規】p.66-76
[必修]5.関係法規 B.医療法 ア.病院、診療所
【問題の狙い】病院、診療所などの医療提供施設を説明できる。
【解説】
医療提供施設とは、医療を受ける者の意向を十分に尊重し、病院、診療所、介護老人保健施設、調剤を実施する薬局、助産所、地域医療支援病院、特定機能病院などである。
3.医療安全支援センターとは、患者又は家族からの当該都道府県等の区域内に所在する病院、診療所若しくは助産所における医療に関する苦情に対応し、又は相談に応ずるとともに、当該患者若しくはその家族又は当該病院、診療所若しくは助産所の管理者に対し、必要に応じ、助言を行う施設である。

 

 

問題12 応招義務がある医療資格はどれか。
1. 柔道整復師
2. 救急救命士
3. 助産師
4. 保健師

 

【解答】 3 【法規】p. 49-51
[必修]5.関係法規 C.医師法 イ.業務 ④応招義務等
【問題の狙い】応招義務がある医療資格を説明できる。
【解説】
応招義務は、助産師の他、医師、歯科医師、薬剤師に規定されている。
医師
診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。[医師法第19条第1項]
歯科医師
診療に従事する歯科医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。[歯科医師法第19条第1項]
薬剤師
調剤に従事する薬剤師は、調剤の求めがあつた場合には、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。[薬剤師法第21条]
助産師
業務に従事する助産師は、助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導の求めがあつた場合は、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。[保健師助産師看護師法第39条第1項]
※上記文章中に「求(め)」の送り仮名の有無や「つ」「よ」が大文字となっているが,法律の原文に従った表記である。

 

 

問題13 柔道整復師の業務範囲に含まれないのはどれか。
1. 上腕骨外側上顆炎
2. 腸脛靭帯炎
3. 閉鎖性骨折
4. 開放性骨折

 

【解答】 4 【法規】p.24-25【柔理6】p.7-8,27
[必修]4.柔道整復師法 E.業 ウ.施術の制限 ①柔道整復師の業務範囲
【問題の狙い】柔道整復師の業務範囲を説明できる。
【解説】
1.2.繰り返しの負荷による機械的損傷であり、業務範囲に含まれる。
3.創部と骨折部との交通がないものであり、医師の同意を得た場合は患部に施術することができる。業務範囲に含まれる。
4.創部と骨折部との交通があるものであり、軟部組織が損傷された外界と骨折部が交通し、高度なものは骨片が皮膚外に露出するため、細菌感染の危険性が高いので専門医に託す必要がある。業務範囲に含まれない。

 

 

問題14 柔道整復師の施術料の算定で誤っているのはどれか。
1. 冷罨法料は、骨折では受傷日から7日間は算定できる。
2. 冷罨法料は、打撲では受傷日から3日間は算定できる。
3. 温罨法料は、骨折は受傷日の8日目から算定できる。
4. 電療料は、打撲は受傷日の6日目から算定できる。

 

【解答】 2 【社倫】p.26
[必修]6.柔道整復師と国民医療 A.国民医療費 エ.療養費とは
【問題の狙い】柔道整復師の施術料の算定を説明できる。
【解説】
1.2.冷罨法料は氷やアイスパック、冷湿布、冷却機器などで患部を冷やす施術料金で、骨折、不全骨折は受傷日から7日間は算定できる。脱臼は受傷日から5日間は算定できる。打撲、捻挫、挫傷は受傷日又は翌日の初検時1回算定できる。
3.温罨法料は蒸しタオルやホットパック、温湿布などで患部を温める施術料金で、骨折、不全骨折は受傷日の8日目から算定できる。打撲、捻挫、挫傷は受傷日の6日目から算定できる。
4.電療料は人体に危害を及ぼすおそれのない電気光線器具を使う施術料金で、骨折、不全骨折は受傷日の8日目から算定できる。打撲、捻挫、挫傷は受傷日の6日目から算定できる。

 

 

問題15 国民医療費の財源の構成割合で最も多いのはどれか。
1. 被保険者の保険料
2. 事業主の保険料
3. 地方の公費
4. 患者の自己負担

 

【解答】 1 【社倫】p.9
[必修]6.柔道整復師と国民医療 A.国民医療費 イ.国民医療費の財源
【問題の狙い】国民医療費の財源を説明できる。
【解説】
国民医療費の財源は、厚生労働省(平成28年度国民医療費の概況)によると、①保険料49.1%(事業主20.8%、被保険者28.3%)、②公費38.6%(国庫25.4%、地方13.2%)、③患者自己負担11.5%、④その他12.2%とされている。
1.被保険者の保険料:28.3%
2.事業主の保険料:20.8%
3.地方の公費:13.2%
4.患者の自己負担:11.5%

 

 

問題16 定型的鎖骨骨折を疑う所見でないのはどれか。
1. 患者はすり足歩行をしている。
2. 患側の肩幅が増大してみえる。
3. 頭部を患側に傾けている。
4. 患側上肢を健側で支えている。

 

【解答】 2 【柔理6】p.232
[必修]7.定型的鎖骨骨折の診察および整復A.診察 イ
【問題の狙い】定型的鎖骨骨折の臨床所見を説明できる。
【解説】
定型的鎖骨骨折は転倒して肩部を衝き発生することが多い。好発部位は中央・遠位1/3境界部である。
1.患者は患部の動揺を抑えるためすり足歩行を呈する。
2.患側の肩幅は遠位骨片の短縮転位に伴い、減少してみえる。
3.頭部は胸鎖乳突筋の緊張を和らげるため患側に傾く(疼痛緩和肢位)。
4.上肢は自重により下垂するため、患者は健側上肢で支える。

 

 

問題17 定型的鎖骨骨折の整復で正しいのはどれか。
1. 助手に鎖骨を把持させる。
2. 術者は遠位骨片端に上方より直圧を加える。
3. 胸郭拡大により短縮転位を除去する。
4. 鎖骨の整復台は座位整復法で使用する。

 

【解答】 3 【柔実】p.66-68
[必修]7.定型的鎖骨骨折の診察および整復E.整復操作 ア イ
【問題の狙い】定型的鎖骨骨折の整復法を説明できる。
【解説】
鎖骨の整復法には座位整復法と臥位整復法があるが、いずれの整復法も胸郭の拡大を原則とする。
1.鎖骨骨折の整復では、第1助手には胸郭拡大、第2助手には上肢の把持を指示する。助手が鎖骨自体を把持することはない。
2.術者は近位骨片と遠位骨片を近づける操作を行う。遠位骨片への直圧は下方転位を助長する。
3.胸郭を拡大することにより遠位骨片の短縮転位を除去する。
4.鎖骨の整復台は臥位整復法で使用する。

 

 

問題18 鎖骨骨折の固定に使用しないのはどれか。
1. 三角巾
2. 鎖骨バンド
3. 厚紙副子
4. アルフェンス

 

【解答】 4 【柔実】p.68
[必修]8.定型的鎖骨骨折の固定A.固定材料 ア
【問題の狙い】鎖骨骨折の固定材料を説明できる。
【解説】
鎖骨骨折の固定は胸郭拡大を原則として固定する。固定の材料に絶対的な正解はないが、一般的には巻軸包帯、鎖骨バンド、リング、厚紙副子などを用いて固定する。
1.上肢の動揺は骨折部への動揺につながり、また、自重による下方転位を防ぐ目的で三角巾による提肘を行う。
2.鎖骨バンドは胸郭拡大位を保持させるための装具で、鎖骨骨折では一般的に使用される。リングによる固定も同様の効果が期待できる。
3.厚紙副子は骨折部を覆い、保護するための局所副子である。
4.アルフェンスは手指などの固定に用いる金属副子であり、鎖骨骨折では一般的には用いない。

 

 

問題19 上腕骨外科頸外転型骨折で正しいのはどれか。
1. 三角筋の膨隆が消失する。
2. 骨幹軸の骨折端は内方へ向く。
3. 遠位骨片は軽度内転する。
4. 肩峰と大結節の距離は短縮する。

 

【解答】 2 【柔理5】p.196
[必修]9.上腕骨外科頸外転型骨折の診察および整復A.診察イ ウ カ
【問題の狙い】上腕骨外科頸外転型骨折の症状を説明できる。
【解説】
上腕骨外科頸外転型骨折は高齢者に多い骨折で臨床上重要な骨折である。介達外力での発生で上肢の肢位によって骨折型(外転型・内転型)に分類される。
1.上腕骨外科頸外転型骨折では、外見上、肩関節前方脱臼に類似する。しかし、脱臼時に認める三角筋膨隆の消失は上腕骨頭の位置は正常であることから認めない。
2.上腕骨外科頸外転型骨折の骨幹軸は内方へ向き、内転型では外方へ向く。
3.上腕骨外科頸外転型骨折の遠位骨片は軽度外転し、内転型では軽度内転する。
4.上腕骨外科頸外転型骨折では、上腕骨頭は軽度内転し、大結節が下方へ傾く。そのため肩峰と大結節の距離は延長する。

 

 

問題20 上腕骨外科頸外転型骨折の整復法で誤っているのはどれか。
1. 末梢牽引は遠位骨片軸方向に行う。
2. 術者は両母指を骨幹部に当てる。
3. 術者は小指球で遠位骨片の骨折端を前方から圧迫する。
4. 第2助手は肘関節部を前方へ引き上げる。

 

【解答】 2 【柔理5】p.196
[必修]9.上腕骨外科頸外転型骨折の診察および整復E.整復操作 イ
【問題の狙い】上腕骨外科頸外転型骨折の整復法を説明できる。
【解説】
上腕骨外科頸外転型骨折の整復法は、まず、第1助手が患側肩を固定する。
1.第2助手が患側肘関節直角位にて遠位骨片軸方向に末梢牽引する。その後、内転させ上腕長軸に合わせる。
2.術者は両母指を大結節に他4指を骨幹部に当て遠位骨片を引き出す。(内方転位の除去)
3.術者は小指球で遠位骨片の骨折端を前方から圧迫する。
4.第2助手は患側肘関節部を前方へ引き上げる。(前方転位の除去)

 

 

問題21 上腕骨骨幹部三角筋付着部より遠位骨折の固定肢位で誤っているのはどれか。
1. 肩関節 ――― 外転70度
2. 肩関節 ――― 水平伸展30〜45度
3. 肘関節 ――― 直角位
4. 前 腕 ――― 回内回外中間位

 

【解答】 2 【柔理5】p.203
[必修]10.上腕骨骨幹部三角筋付着部より遠位骨折の固定B.固定肢位 イ
【問題の狙い】上腕骨骨幹部三角筋付着部より遠位骨折の固定肢位を説明できる。
【解説】
上腕骨骨幹部三角筋付着部より遠位骨折では近位骨片は前外方転位を、遠位骨片は後上方転位を呈する。そのため、外転副子やミッデルドルフ三角副子などを用いて外転位で固定する。
1.2.肩関節は外転70度、水平屈曲30〜40度で固定する。
3.肘関節は直角位で固定する。
4.前腕は回内回外中間位で固定する。

 

 

問題22 コーレス(Colles)骨折の異常経過で、腫脹が改善せず、手背側の皮膚が緊張して鏡面状の場合に危惧する病態はどれか。
1. 異所性骨化
2. 阻血性拘縮
3. 破傷風
4. ズデック(Sudeck)骨萎縮

 

【解答】 4 【柔実】p.161【柔理5】p.38
[必修]11.コーレス(Colles)骨折の診察および整復B.血管・神経損傷、その他の合併症の確認 エ
【問題の狙い】コーレス骨折の異常経過を説明できる。
【解説】
ズデック骨萎縮では、問題文の症状の他、手指の関節可動域制限や運動痛を認める。
1.2.異所性骨化(外傷性骨化性筋炎)及び阻血性拘縮では、腫脹や皮膚の緊張は認めない。
3.破傷風は損傷部位から破傷風菌が体内に侵入し、破傷風菌が産生する毒素のひとつである神経毒素(破傷風毒素)により強直性痙攣をひき起こす感染症である。
4.ズデック骨萎縮は、コーレス骨折や踵骨骨折後等、四肢の外傷後に生じることがある。

 

 

問題23 コーレス(Colles)骨折の屈曲整復法を術者と助手の2名で行う場合で正しいのはどれか。
1. 患肢の肘関節を伸展位とし、助手は上腕骨遠位部を把持する。
2. 患肢の前腕は回外位とする。
3. 術者は遠位骨片を手とともに背屈させ円回内筋を弛緩させる。
4. 術者は背側転位を除去するために、手とともに遠位骨片を掌屈させる。

 

【解答】 4 【柔実】p.156
[必修]11.コーレス(Colles)骨折の診察および整復E.整復操作 イ
【問題の狙い】コーレス骨折の整復法を説明できる。
【解説】
1.2.患肢の肘関節は90度、前腕回内位とし、助手は骨折部の近位部を把持する。
3.遠位骨片を手とともに背屈させて弛緩するのは腕橈骨筋である。
4.手とともに遠位骨片を掌屈させて背側転位を除去する。

 

 

問題24 コーレス(Colles)骨折の固定後の確認で正しいのはどれか。
1. MP関節が確実に固定されていることを確認する。
2. 腫脹が増大して緊縛度が上がっても再転位防止のため固定を除去しないよう患者に指導する。
3. 爪圧迫検査は指先の感覚の確認に有用である。
4. 軽く手の閉じ開きをさせて運動神経の損傷の有無を確認する。

 

【解答】 4 【柔実】p.159
[必修]12.コーレス(Colles)骨折の固定 F.固定後の確認 ウ エ
【問題の狙い】コーレス骨折の固定後の確認事項を説明できる。
【解説】
1.コーレス骨折の固定範囲は、MP関節手前までであり、MP関節は固定しない。
2.急性期は固定後の腫脹の増大により固定による緊縛が生じる可能性があり、緊縛の症状を患者に十分に説明し、症状が出現した場合は包帯を緩め、施術所に連絡するか医療機関を受診するよう指導する。
3.爪圧迫検査は爪を圧迫して白くなった状態から赤みを帯びるかいなか、また、赤みの戻り方を患側と比較する検査である。赤みを帯びれば血行は維持されている。赤みの戻り方が健側より遅ければ、血行障害が生じている可能性がある。
4.グーとパーができれば、運動神経は損傷されていないと判断できる。

 

 

問題25 第5中手骨頸部骨折の固定肢位で正しいのはどれか。
1. 手関節軽度屈曲位
2. MP関節90度屈曲位
3. PIP関節90度屈曲位
4. DIP関節軽度屈曲位

 

【解答】 4 【柔実】p.185-186
[必修]13.第5中手骨頸部骨折の固定
【問題の狙い】第5中手骨頸部骨折の固定肢位を説明できる。
【解説】
第5中手骨頸部骨折の固定は緊密な肢位で実施すると指の拘縮を惹起するため、手関節軽度伸展位・MP関節40~70度・IP関節軽度屈曲位が推奨されている。
1.手関節は軽度屈曲位ではなく軽度伸展位とする。
2.MP関節は90度屈曲位ではなく40~70度とする。
3.PIP関節は90度屈曲位ではなく軽度屈曲位とする。
4.DIP関節は軽度屈曲位とする。

 

 

問題26 肋骨骨折の固定法でないのはどれか。
1. T字状木製板固定
2. 竹矢来状型固定
3. 格子状絆創膏固定
4. 屋根瓦状型固定

 

【解答】 1 【柔理5】p.148,188【柔実】p.418-419
[必修]14.肋骨骨折の固定
【問題の狙い】肋骨骨折の固定法の種類を説明できる。
【解説】
肋骨骨折の固定法には各種絆創膏固定、ならびに巻軸帯、晒(サラシ)、弾性包帯、厚紙副子、胸部固定帯(バストバンド)などの衛生材料を用いた方式がある。
1.T字状木製板固定は鎖骨骨折に用いる胸郭の拡大を目的とした固定方式である。
2.竹矢来状型固定、3.格子状絆創膏固定、4.屋根瓦状型固定は肋骨骨折に用いる絆創膏固定の固定方式である。

 

 

問題27 肩鎖関節上方脱臼のトッシー(Tossy)分類で正しいのはどれか。
1. 第1度損傷は不全脱臼である。
2. 第2度損傷は烏口鎖骨靱帯の完全断裂がみられる。
3. 第2度損傷は階段状変形を認めることがある。
4. 第3度損傷はエックス線正面像で鎖骨遠位端部が肩峰に対して1/2程度上方へ転位している。

 

【解答】 3 【柔理5】p.262【柔実】p.211
[必修]15.肩鎖関節上方脱臼の診察および整復 A.診察 ウ
【問題の狙い】肩鎖関節上方脱臼の分類を説明できる。
【解説】
1.第1度損傷は、関節包や肩鎖関節靱帯の部分断裂はあるが関節の安定性が良好なものである(捻挫)。
2.第2度損傷は、関節包や肩鎖靱帯は完全断裂していて関節は不安定、鎖骨遠位端が上方に転位していて関節包も離開している。エックス線正面像で鎖骨遠位端が肩峰に対して1/2上方へ転位している(不全脱臼)。
3.第2度損傷は階段状変形を認めピアノキー症状を呈することがある。
4.第3度損傷は、関節包、肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯が完全断裂し、エックス線正面像で鎖骨遠位端部下面が肩鎖上面より上方に転位している(完全脱臼)。

 

 

問題28 肩鎖関節上方脱臼の整復で正しいのはどれか。
1. 助手は両上腕遠位部を把持する。
2. 助手は患肢を後上方へ引く。
3. 術者は患肢を90度外転位で上方へ押し上げる。
4. 術者は肩峰部を下方へ圧迫し整復する。

 

【解答】 2 【柔実】p.213
[必修]15.肩鎖関節上方脱臼の診察および整復 E.整復操作 ア イ
【問題の狙い】肩鎖関節上方脱臼の整復を説明できる。
【解説】
1.2.助手は患者の後方に位置し、両上腕部(近位)を把持、後上方へ持ち上げ保持させる。
3.術者は患肢を把持し、肩関節40〜60度外転位で上方に押し上げる。
4.術者は鎖骨遠位端部を下方に圧迫し整復する。

 

 

問題29 肩鎖関節上方脱臼の固定で誤っているのはどれか。
1. 第1度損傷は患肢の提肘が必要である。
2. ロバート・ジョーンズ(Robert-Jones)固定は尺骨神経麻痺に注意する。
3. 固定変更時は吊り包帯の除去を優先し局所副子による固定を継続する。
4. 固定交換時には固定肢位が変化しないように上肢台を使用する。

 

【解答】 3 【柔実】p.213-217
[必修]16.肩鎖関節上方脱臼の固定E.固定の手順 ア イ ウ F.固定後の確認 イ ウ エ
【問題の狙い】肩鎖関節上方脱臼の固定を説明できる。
【解説】
1.第1度損傷においても患肢を保持する必要があり、三角巾や装具で提肘を行う。
2.ロバート・ジョーンズ固定は、第2度損傷以上に用いる。肘関節部で局所的に圧迫されている部位がないか確認する。走行は以下の通りである。
走行:胸部前面→鎖骨遠位端部→上腕後面→肘→上腕前面→鎖骨遠位端部→健側肩甲骨下部
3.固定方法は経過に応じて変更する。局所副子の除去後、吊り包帯を継続し経過を観察する。
4.固定交換時には上肢の固定肢位が変化しないように上肢台の高さを合わせ患肢をのせる。

 

 

問題30 肩関節烏口下脱臼の合併症で誤っているのはどれか。
1. 上腕骨外科頸骨折
2. 上腕骨頭前内側の陥凹
3. 大結節骨折
4. 関節唇損傷

 

【解答】 2 【柔実】p.223【柔理5】p.266
[必修]17.肩関節烏口下脱臼の診察および整復B.血管・神経損傷、その他の合併症の確認 ア エ
【問題の狙い】肩関節烏口下脱臼の合併症を説明できる。
【解説】
肩関節烏口下脱臼は脱臼の中で最も頻度の高い脱臼であり、その合併症の把握は重要である。
1.3.4.は合併しうる。2.は上腕骨頭後外側の陥凹で、ヒル・サックス損傷である。介達外力で発生する肩関節烏口下脱臼は、一般的に肩関節外転・外旋位で発生する。そのため、関節窩縁と衝突し、上腕骨頭の骨折が生じるのは後外側となる。
4.は別名バンカート損傷である。
その他合併症としては、関節下縁骨折(骨性バンカート損傷)、腋窩神経・筋皮神経の麻痺や腋窩動脈の損傷である。

 

 

問題31 肩関節烏口下脱臼の整復法とその特徴との組合せで正しいのはどれか。
1. ヒポクラテス(Hippocrates)法―――安全性の高い整復方法である。
2. コッヘル(Kocher)法―――錘を用いる。
3. スティムソン(Stimson)法―――患者背臥位にて整復する。
4. ゼロポジション法―――整復音を感じにくい。

 

【解答】 4 【柔実】p.223-226【柔理5】p.267
[必修]17.肩関節烏口下脱臼の診察および整復E.整復操作 ア イ ウ
【問題の狙い】肩関節烏口下脱臼の整復法とその特徴を説明できる。
【解説】
肩関節烏口下脱臼の整復法は複数あり、特に、選択肢の4つの手順や特徴はおさえておく必要がある。
1.ヒポクラテス法は患者背臥位とし、術者の踵部および足部の外側縁を患者の腋窩にあてて行う方法である。踵部で骨頭を圧迫するなど行うと、神経損傷や動脈損傷を惹起し、整復が非常に危険かつ困難となる。また、高齢者の整復では肩甲骨や肋骨骨折に注意することが必要である。
2.患者を座位とし、助手に両肩部を固定させ、行う。錘を用いるのはスティムソン法である。
3.患者を腹臥位とし、患側肩が診察台の端から外にでる位置で、患肢下垂位にて行う。患肢の手関節部に錘を取り付け、しばらく放置することで整復される。
4.患者を背臥位とし、患肢を軽く牽引しながらゼロポジションの位置まで挙上する。肩関節の筋が弛緩してきたときに整復されるが、この時、整復音をほとんど感じない。

 

 

問題32 肩関節烏口下脱臼の固定および固定後の確認で正しいのはどれか。
1. 肩関節から肘関節部まで固定を施す。
2. 壮年と比べ青年の方が固定期間は短い。
3. 転位が大きい大結節骨折合併例では肩関節外転・外旋位で固定する。
4. 固定後は鎖骨下動脈の拍動にて循環を確認する。

 

【解答】 3 【柔実】p.226-227【柔理5】p.198,267
[必修]18.肩関節烏口下脱臼の固定 E.固定の手順 ウ エ F.固定後の確認 ウ
【問題の狙い】肩関節烏口下脱臼の固定および固定後の確認を説明できる。
【解説】
1.肩関節部のみの固定とする。
2.30歳代以下では、反復性脱臼の予防を優先して考え、40歳代以上より固定期間を長くする。従って、青年の方が固定期間を長くする。
3.烏口下脱臼のみであれば、肩関節軽度屈曲、内旋位に固定するが、大結節骨折を合併しその骨片転位が著しい場合は、肩関節外転、外旋位に固定する。この骨折の合併は、脱臼時の腱板による裂離骨折で生じる。
4.橈骨動脈の拍動にて確認する。

 

 

問題33 肘関節後方脱臼の肘頭圧迫屈曲整復法で正しいのはどれか。
1. 患者を側臥位とする。
2. 助手に上腕部を把持させる。
3. 四指で肘頭を圧迫する。
4. 両母指で肘関節前面を把持する。

 

【解答】 1 【柔実】p.235
[必修]19.肘関節後方脱臼の診察および整復 E.整復操作 ア イ
【問題の狙い】肘関節後方脱臼の整復法を説明できる。
【解説】
肘関節後方脱臼に対する整復第2法(肘頭圧迫屈曲法)とされている。
1.患者を脱臼肢位のまま側臥位とする。
2.患肢の手関節部を助手に把持させる。
3.術者は両母指を肘頭にあてる。
4.他四指で肘関節部前面を把持する。
次に、両母指で肘頭を圧迫しながら、半円を描くように整復する。

 

 

問題34 肘関節後方脱臼の固定で肘関節を軽度屈曲位とするのはどれか。
1. 高度な靱帯損傷がある場合
2. 腫脹が軽減した場合
3. 強い圧迫感を訴えた場合
4. 内側上顆骨折を合併している場合

 

【解答】 3 【柔実】p.129,236,270【柔理5】p.217,272
[必修]20.肘関節後方脱臼の固定 B.固定肢位 イ E.固定の手順 カ
【問題の狙い】肘関節後方脱臼の固定法を説明できる。
【解説】
肘関節後方脱臼の固定肢位は、肘関節90度屈曲位、前腕中間位または回内とされているが、患者が疼痛や圧迫感を強く訴える場合は、肘関節を軽度屈曲位で固定する。とくに経時的な腫脹の出現に注意する必要がある。
1.内側側副靱帯損傷の固定肢位は肘関節90度屈曲位である。
2.腫脹が強い場合に肘関節軽度屈曲位とする。
3.循環障害を防ぐため軽度屈曲位とする。
4.内側上顆骨折の固定肢位は肘関節90度屈曲位、前腕回内位である。

 

 

問題35 肘内障の所見で誤っているのはどれか。
1. 患側前腕を回外位で下垂している。
2. バンザイができない。
3. 腕橈関節に限局した圧痛がみられる。
4. 腫脹がみられない。

 

【解答】 1 【柔理5】p.275-276【柔実】p.241-242
[必修]21.肘内障の診察および整復 A.診察 イ ウ エ
【問題の狙い】肘内障の状態を説明できる。
【解説】
肘内障は局所所見に乏しいため、健側との比較が大切である。
1.患側前腕は回内位で下垂している。
2.バンザイをするよう指示してもできない。
3.輪状靱帯の下を橈骨頭がくぐり抜けることによって発生するため、腕橈関節部に限局した圧痛がみられる。
4.腫脹や発赤などの炎症所見がみられない。

 

 

問題36 関節面の損傷を合併した示指PIP関節背側脱臼の固定法はどれか。
1. バディーテープ
2. ロバートソン(Robertson)三方牽引法
3. フィンガートラクション
4. ジャス(Jahss)固定

 

【解答】 2 【柔実】p.213-214,247-249
[必修]22.示指PIP関節背側脱臼の固定
【問題の狙い】示指PIP関節背側脱臼の損傷程度に応じた固定方式を説明できる。
【解説】
示指のPIP関節脱臼では指尖からの軸圧で発生することが多く、関節面の損傷を合併することが多いため、留意した施術が必要である。
1.バディーテープは隣接指を含めた固定の際に隣接指間の皮膚への障害予防を目的とした施術方式であり、関節面の損傷を合併した際には、隣接指を含まず固定するため、バディーテープは使用しない。
2.ロバートソン三方牽引法は関節面の損傷を伴う示指PIP関節脱臼に用いる、患肢のみに単独で実施する施術方式である。
3.フィンガートラクションは手指の整復の際に効率よい牽引法を実施するための施術方式である。
4.ジャス固定はボクサー骨折に用いられるMP関節を強く屈曲させる固定法である。

 

 

問題37 腱板損傷で正しいのはどれか。
1. 急性期では棘上筋の萎縮が著明である。
2. 肩関節外転20~30度で疼痛を認める。
3. ヤーガソン(Yergason)テスト陽性となる。
4. 腱板疎部損傷を合併することがある。

 

【解答】 4 【柔実】p.258,266
[必修]23.肩腱板損傷の診察A.診察 ウ オ B.血管・神経損傷、その他の合併症の確認 エ
【問題の狙い】腱板損傷の症状および合併症を説明できる。
【解説】
腱板は棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋で構成され、特に棘上筋腱の損傷が多いとされている。
1.筋の萎縮は経時的に生じるため、急性期ではみられない。
2.肩関節外転60~120度で疼痛を認める(有痛弧徴候)。
3.ヤーガソンテストは上腕二頭筋長頭腱炎のテスト法である。
4.棘上筋腱と肩甲下筋腱の間隙を腱板疎部といい、この部の損傷を合併することがある。

 

 

問題38 上腕二頭筋長頭腱損傷で正しいのはどれか。
1. 腱炎は遠心性収縮で生じることが多い。
2. 腱炎は筋腹の近位部に腱性の索状物を触れる。
3. 腱断裂は直後でも他動運動は可能である。
4. 腱脱臼は上腕骨大結節骨折時に発生する。

 

【解答】 3 【柔実】p.265【柔理5】p.199
[必修]24.上腕二頭筋長頭腱損傷の診察 A.診察 ア ウ
【問題の狙い】上腕二頭筋長頭腱損傷の概要、所見を説明できる。
【解説】
上腕二頭筋長頭腱損傷は腱断裂、腱炎、腱脱臼などが挙げられる。
1.腱炎は肩関節の運動(特に外転・外旋)を繰り返し、小結節との摩擦で生じることがある。遠心性収縮時に生じやすいのは腱断裂である。
2.腱断裂時に筋腹部は健側と比較し遠位側に移動し、筋腹の近位部に腱性の索状物を触れる。
3.腱断裂直後は疼痛のため自動運動は見受けないが、他動運動は可能である。
4.腱脱臼は上腕骨小結節骨折に合併し発生することが多い。

 

 

問題39 ハムストリングス損傷で正しいのはどれか。
1. 腹臥位で膝関節他動屈曲が困難である。
2. 膝関節自動伸展により筋収縮痛を確認する。
3. 損傷の程度によって下肢伸展挙上角度が減少する。
4. 筋の陥凹が明確に触知できるのは受傷数日後である。

 

【解答】 3 【柔理5】p.362
[必修]25.大腿部打撲・肉ばなれ、大腿四頭筋、ハムストリングスの診察A.診察 ウ D.検査手技・動作 イ
【問題の狙い】ハムストリングス損傷の診察を説明できる。
【解説】
ハムストリングス損傷は、切り返しやダッシュ、疾走中に発生する肉ばなれである。
1.腹臥位で膝関節他動屈曲が困難であるのは大腿部前面に位置する大腿四頭筋損傷時である。
2.膝関節自動伸展は大腿四頭筋が収縮する。
3.損傷の程度によって重症度が高いほど下肢伸展挙上角度が減少する。
4.受傷数日後では損傷部からの出血により筋の陥凹の触知が難しくなる。

 

 

問題40 膝関節内側側副靱帯損傷で伸展位での外反動揺性がみられるのはどれか。
1. Ⅰ度
2. Ⅱ度
3. Ⅲ度
4. Ⅳ度

 

【解答】 3 【柔理5】p.53,398【柔実】p.378
[必修]26.膝関節側副靱帯損傷の診察 A.診察 ウ
【問題の狙い】膝関節内側側副靱帯損傷の分類を説明できる。
【解説】
靱帯損傷は損傷程度からⅠ度からⅢ度に分類される。膝関節内側側副靱帯損傷の検査には膝関節不安定テスト(外反ストレステスト)があり、伸展位と軽度屈曲位で行い側方動揺性の有無を確認する。伸展位で不安定性がみられるとⅢ度損傷ならびに複合損傷が疑われる。
1.Ⅰ度:徒手検査で外反不安定性は確認できない。
2.Ⅱ度:不安定性は膝関節30度屈曲位での外反動揺性は認められるが、伸展位では外反動揺性は認められない。
3.Ⅲ度:膝関節30度屈曲位および伸展位で外反動揺性が認められる。
4.Ⅳ度は分類にはない。

 

 

問題41 膝関節前十字靱帯損傷の検査法でエンドポイント(靱帯終末抵抗)の有無で判断する検査はどれか。
1. 前方引き出しテスト
2. ラックマン(Lachmann)テスト
3. N-テスト
4. ピボットシフト(Pivot Shift)テスト

 

【解答】 2 【柔実】p.369-370
[必修]27.膝関節十字靱帯損傷の診察 D.検査手技・動作 イ
【問題の狙い】膝関節前十字靱帯損傷の検査法が説明できる。
【解説】
膝関節前十字靱帯損傷の検査法は各種あるが、エンドポイントや動揺性、脱臼感などを触知し判断する必要があるため操作や評価に習熟が必要である。
1.は脛骨の前方引き出し操作による脛骨前方変位をみる。
2.は下腿部の移動量と靱帯終末抵抗(エンドポイント)の有無を確認するテストである。したがってこれが答えである。
3.は脛骨の前外側回旋不安定性の誘発テストである。屈曲位の膝関節から脛骨に外反、内旋力を加えながらゆっくり伸展させると前十字靱帯断裂側では脛骨外側顆が30度から20度付近で前方へ亜脱臼する。
4.はN-テストの逆動作となる膝関節伸展位からのリバーステストで前外側回旋不安定性整復テストである。

 

 

問題42 膝関節半月板損傷の症状で誤っているのはどれか。
1. 荷重時痛
2. 不安定性
3. 関節血腫
4. 関節水腫

 

【解答】 2 【柔理5】p.397
[必修]28.膝関節半月板損傷の診察 A.診察 ウ オ
【問題の狙い】膝関節半月板損傷の症状が説明できる。
【解説】
半月板損傷はスポーツ活動中、膝関節屈伸運動時に下腿の回旋が加わったときに発生しやすく内側に多い。小児では形態異常(円板状半月)、高齢者では変性により損傷し、外傷の機転が明らかでないこともある。
症状は、1.の荷重時痛、嵌頓症状(ロッキング:断裂した半月板の嵌頓によって膝が屈曲したまま伸展不能となる状態)、クリック、3.の関節血腫、4.の関節水腫がみられる。
半月板損傷では2.の膝関節不安定性は出現しない。したがって答えは2.である。

 

 

問題43 膝関節内側側副靱帯完全断裂の固定で最も適しているのはどれか。
1. 綿包帯固定
2. 弾性包帯固定
3. テーピング固定
4. ギプスシャーレ固定

 

【解答】 4 【柔実】p.379-380
[必修]29.膝関節内側側副靱帯損傷の固定 A.固定材料 ア
【問題の狙い】膝関節内側側副靱帯損傷の固定が説明できる。
【解説】
膝関節内側側副靱帯の完全断裂では膝関節の不安定性が著明にみられると考えられる。内側側副靱帯は膝関節の外反および下腿の外旋を制御しているので外反動揺テストが陽性となる。関節の動揺性を認める完全断裂(Ⅲ度損傷)では、膝関節軽度屈曲位で2週から3週の硬性材料(ギプス、クラーメル)による固定を施し免荷を指示する。したがって答えは4.のギプスシャーレ固定となる。軽度損傷や不安定性のないⅠ度損傷では、包帯やテーピング固定(選択肢1.2.3.)などを行う。

 

 

問題44 下腿三頭筋肉ばなれで正しいのはどれか。
1. 圧痛の多くは下腿遠位部外側に認める。
2. 足関節自動伸展時に強い運動痛を認める。
3. 損傷部に陥凹を認めることがある。
4. シモンズ(Simonds squeezing)テストが陽性となる。

 

【解答】 3 【柔理5】p.69【柔実】p.388-389
[必修]30.下腿三頭筋肉ばなれの診察 A.診察 ウ エ D.検査手技・動作 イ
【問題の狙い】下腿三頭筋肉離れの診察を説明できる。
【解説】
下腿三頭筋の肉ばなれは、下腿に瞬間的な強い力が加わった際に発生する。また下腿三頭筋につながるアキレス腱に損傷がないか鑑別することが重要である。
1.圧痛の多くは下腿中央部内側に認める。
2.足関節自動屈曲時や他動伸展時に疼痛を認める。
3.肉ばなれは筋損傷のⅡ度であり、局所に陥凹を確認できるものもある。
4.シモンズテストが陽性になるのはアキレス腱断裂である。

 

 

問題45 アキレス腱断裂の固定で長下肢キャストを行う際、神経障害を防止するための助手の注意点となるのはどれか。
1. 助手の立ち位置
2. 足関節の肢位
3. 膝関節の肢位
4. キャストの把持の仕方

 

【解答】 4 【柔実】p.393
[必修]31.アキレス腱断裂の固定 D.助手への指示 ア イ ウ
【問題の狙い】アキレス腱断裂の固定における助手の注意点を説明できる。
【解説】
アキレス腱断裂の固定は、長下肢副子、長下肢キャスト、短下肢副子などがあり場合によって使い分ける。長下肢キャストの固定における助手の注意点は、2.3.肢位が変化しないようにすること、そのために1.立ち位置を工夫すること、4.キャストの把持の仕方(腓骨頭部のキャストに指の跡がつかないように注意すること)などがあげられる。特に4.キャストの把持で腓骨頭部に指の跡がつき圧迫してしまうと、腓骨神経麻痺がおこる可能性があるため注意する。

 

 

問題46 足関節外側靱帯損傷の内反動揺検査で、健側と比べた距骨傾斜角の差で前距腓靱帯・踵腓靱帯断裂と推測されるのはどれか。
1. 0度
2. 5度
3. 10度
4. 20度

 

【解答】 4 【柔実】p.405-406
[必修]32.足関節外側靱帯損傷の診察 D.検査手技・動作 イ
【問題の狙い】足関節外側靱帯損傷の内反動揺検査を説明できる。
【解説】
足関節外側靱帯損傷の内反動揺検査は、下腿遠位部を把持し他方の手で足背側を把持し足部に内反強制させるものである。レントゲン検査で健側と患側で距骨の傾斜角を比較して損傷の程度を評価する。
1.正常である。
2.健側より5度大きい場合は前距腓靱帯断裂と推測される。
3.健側より10度大きい場合は前距腓靱帯断裂と推測される。
4.健側より20度大きい場合は前距腓靱帯・踵腓靱帯断裂と推測される。

 

 

問題47 前距腓靱帯部分断裂の固定期間はどれか。
1. 1週間
2. 3週間
3. 6週間
4. 8週間

 

【解答】 2 【柔実】p.408
[必修]33.足関節外側靱帯損傷の固 E.固定の手順 オ
【問題の狙い】前距腓靱帯部分断裂の固定期間を説明できる。
【解説】
足関節の外側側副靱帯損傷は、損傷の程度、損傷の靱帯によって固定期間が異なる。前距腓靱帯の部分断裂では約3週間、前距腓靱帯の完全断裂や外側側副靱帯の完全断裂では約6~8週間である。

 

 

問題48 下腿骨骨幹部骨折のギプス固定で誤っているのはどれか。
1. 肢位は膝関節30~40度屈曲位、足関節0~20度底屈位で固定する。
2. 範囲は大腿中央部から足MP関節手前までとする。
3. 腓骨頭周囲を有窓にする。
4. 期間は6~7週である。

 

【解答】 4 【柔実】p.311
[必修]34.下腿骨骨幹部骨折の固定 B.固定肢位 イ E.固定の手順 ウ エ
【問題の狙い】下腿骨骨幹部骨折の固定を説明できる。
【解説】
本症のギプス固定は急性期の場合、腫脹の増大が見込まれるため、必ず有窓および割入れを施行する。
1.肢位は膝関節30~40度屈曲位、足関節0~20度底屈位を保持するよう固定する。
2.範囲は大腿中央部から足MP関節手前までである。しかし、国家試験出題基準2020年版では「大腿近位部から趾先」と表記されている。おそらく前者はギプス固定を後者は金属副子固定を想定していると考察される。
3.この部の圧迫は腓骨神経麻痺を惹起するため、腓骨頭部を有窓にすることで神経麻痺を防止することができる。
4.期間は8~10週である。中央・遠位1/3境界部ではさらに1~2週間延長する。

 

 

問題49 環軸包帯の巻き方の原則はどれか。
1. 逆巻き・裏巻き
2. 逆巻き・表巻き
3. 順巻き・表巻き
4. 順巻き・裏巻き

 

【解答】 3 【柔固】p.9
[必修]35.包帯法C.包帯の巻き方 ア
【問題の狙い】環軸包帯の巻き方を説明できる。
【解説】
術者の利き腕や患部の状態などによるが、環軸包帯は原則、順巻き表巻きである。
順巻きとは主に右手で包帯を操作し、左から右へと巻いていく方法である。逆巻きは左手で包帯を操作し、右から左へと巻いていく方法である。表巻きは巻軸帯の表(内)面を表にして巻いていく方法で、裏巻きは裏(外)面を表にして巻いていく方法である。

 

 

問題50 包帯の走行を変更する場合や太さが一定でない部位を巻くときに包帯の浮き上がりを防ぐ目的とした包帯法はどれか。
1. 螺旋帯
2. 蛇行帯
3. 亀甲帯
4. 折転帯

 

【解答】 4 【柔固】p.17
[必修]35.包帯法 D.基本包帯の種類と適応 イ ウ オ カ
【問題の狙い】基本包帯法を説明できる。
【解説】
基本包帯法は、環行帯、螺旋帯、蛇行帯、折転帯、亀甲帯、麦穂帯がある。
1.螺旋帯は1/2から2/3重ねて走行する。
2.蛇行帯は下巻きや副子の一次固定などに用いられる。
3.亀甲帯は肘関節や膝関節などの屈伸運動を行う関節に用いる。
4.折転帯は包帯の走行を変更する場合や太さが一定でない部位を巻くときに包帯の浮き上がりを防ぐために用いる。

 

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