⑬「学んでみよう(国試対策)」-2020年2月号ーⅡ 国試直前 演習問題

⑬「学んでみよう(国試対策)」-2020年2月号ーⅡ 国試直前 演習問題

今回は、2020年版 科目別『柔道整復学理論』55問(2020年2月実施『第6回ジャパン模試』問題)より出題させていただきます。

2020年2月号ーⅡ 国試直前 演習問題(協力 ジャパン国試合格)

問題1 裂離骨折で誤っているのはどれか。
1. スゴン(Segond)骨折
2. 上前腸骨棘骨折
3. 脛骨粗面骨折
4. ジョーンズ(Jones)骨折

 

 

【解答】 4 【柔理5】p.28
[柔・総]6.骨折 C.分類 D.症状
【問題の狙い】裂離骨折の病態を説明できる。
【解説】
裂離骨折は筋や腱、靱帯などの牽引力によって付着部が引き裂かれて発生する骨折である。
1.膝関節に大きな回旋力と外反力が加わったときに外側関節包靱帯の脛骨付着部に生じる裂離骨折である。
2.縫工筋や大腿筋膜張筋の牽引により発生する。
3.大腿四頭筋の牽引力によって発生する。
4.第5中足骨近位骨幹部の疲労骨折であるが、外傷性のオリジナルジョーンズ骨折もある。

 

 

問題2 関節包内骨折はどれか。
1. 舟状骨腰部骨折
2. 大腿骨頸部外側骨折
3. 鎖骨中外1/3部骨折
4. 上腕骨外科頸骨折

 

 

【解答】 1 【柔理5】p.38,243
[柔・総]6.骨折 C.分類 キ D.症状 ア
【問題の狙い】関節包内骨折を説明できる。
【解説】
骨折線が関節包内か否かは臨床上重要である。関節包内は骨膜が存在しないため、関節包内骨折は骨膜性仮骨が期待できない。そのため骨癒合は遷延する可能性がある。選択肢の骨折では、舟状骨腰部(中1/3)骨折が関節包内骨折である。

 

 

問題3 小児骨損傷で正しいのはどれか。
1. 静止層での損傷は成長障害が生じることは少ない。
2. 関節内骨折は早期運動療法で自家矯正が期待できる。
3. 骨折後の過成長は骨髄内圧の上昇による持続的な成長軟骨板の刺激による。
4. 固定による拘縮は永続的な障害を残す。

 

 

【解答】 3 【柔理5】p.39-41
[柔・総]6.骨折 D.小児骨損傷・高齢者骨損傷 ア
【問題の狙い】成長軟骨板損傷の特徴を説明できる。
【解説】
1.成長軟骨板損傷は肥大層での損傷が多く、肥大層の損傷では成長障害は起こりにくいが、静止層や増殖層での損傷は成長障害が生じやすい。
2.関節内骨折及び捻転転位は自家矯正が期待できない。
3.特に大腿骨骨幹部骨折で、骨折治癒機序に伴う充血により成長軟骨板が刺激されて長径成長が促進されて過成長が起こる。
4.固定による拘縮は成人より短期間で回復し、永続的な障害を残すことは稀である。

 

 

問題4 骨折の後遺症と原因との組合せで誤っているのはどれか。
1. 過剰仮骨形成―――――――骨膜の広範な剥離
2. 偽関節――――――――――血腫の分散
3. 変形性関節症―――――――関節内骨折
4. ズデック(Sudeck)骨萎縮――感覚神経の活性化

 

 

【解答】 4 【柔理5】p.37-39【柔理6】
p.37-39
[柔・総]6.骨折 H.合併症 ウ
【問題の狙い】骨折の後遺症を説明できる。
【解説】
1.過剰仮骨形成の発生要因として①粉砕骨折、②大血腫の存在、③骨膜の広範な剥離、④早期かつ過剰に行われた後療法があげられる。
2.血腫の分散は偽関節発生の局所的要因にあげられる。
3.関節内骨折は変形治癒が残存すると変形性関節症の原因となる。
4.ズデック骨萎縮は反射性交感神経性ジストロフィーの一病態とされ、小動脈の血管攣縮によるものと考えられており、他にも心因性因子も関係していると考えられている。外傷後すべての症例に発生するわけではなく、個人的な素因や交感神経の活性化が発生の基礎になっている。

 

 

問題5 骨折の合併症で正しいのはどれか。
1. 脂肪塞栓症候群は触診によって特有な握雪音を認める。
2. 区画症候群の予防法に弾性ストッキングを装着する。
3. 関節拘縮は軽度であっても不可逆性の機能障害を残すことがある。
4. フォルクマン(Volkmann)拘縮は受傷後24時間以内に始まる。

 

 

【解答】 4 【柔理5】p.36-39【柔理6】
p.36-39
[柔・総]6.骨折 H.合併症 イ ウ
【問題の狙い】骨折の合併症を説明できる。
【解説】
1.脂肪塞栓症候群は、大腿骨や骨盤骨折、多発骨折の場合にみられる。受傷後1~3日間に起こり、初期には発熱、頻脈がみられる。皮膚では点状出血斑がみられ、肺塞栓では頻脈、呼吸困難やチアノーゼ、脳塞栓では頭痛、不安感、意識障害、嘔吐、痙攣、心塞栓では心悸亢進、血圧の加工などが起こり、ときとして死の転帰をとる。
外傷性皮下気腫は触診によって特有な握雪音(捻髪音)を認める。
2.四肢の筋、血管、神経組織は筋膜、骨膜、骨組織で囲まれており、この空間を区画という。区画症候群(コンパートメント症候群)は、骨、筋、血管の損傷などで区画内の組織内圧上昇による組織の循環不全が生じ、筋、神経組織の機能障害をもたらしたものである。区画症候群の主症状の阻血症状が認められた場合には、早期に区画内の減圧と改善を図るため、速やかに固定を除去するなど、筋、神経組織の壊死を防止しなければならない。
下肢の深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)の予防法として下肢の関節運動や弾性ストッキング装着などがある。
3.関節拘縮は軽度のものは後療法で完全に回復する。しかし強直では不可逆性の機能障害を残すことがある。
4.フォルクマン拘縮は受傷後24時間以内に始まり、自発痛、蒼白、脈拍消失、運動麻痺、感覚麻痺などの阻血症状が現れる。

 

 

問題6 脱臼の機能障害でないのはどれか。
1. 支持作用
2. 受動的運動作用
3. 電解質貯蔵作用
4. 重要器官の保護作用

 

 

【解答】 3 【柔理5】p.63-64
[柔・総]7.脱臼 C.症状
【問題の狙い】脱臼の一般外傷症状を理解できる。
【解説】
脱臼は骨と骨との連結部の機能が破綻するために骨の機能の一部が破綻すると考えられる。
1.脱臼では骨の連結部である関節端が破綻するため、身体を支持する機能が失われる。
2.関節端が破綻すると弾発性固定に至るため、筋による受動的な骨の運動機能が失われる。
3.電解質は骨を構成する成分であり、骨折により骨が破壊されると電解質が漏出するが、脱臼では骨の破壊には至らないため、電解質貯蔵作用は障害されない。
4.骨の機能に重要臓器や中枢神経の保護作用があるが脊椎が脱臼すると椎孔内の脊髄が損傷する可能性が高くなるため、重要器官を保護する機能が失われる。

 

 

問題7 第1指MP関節側副靱帯損傷で正しいのはどれか。2つ選べ。
1. スキーヤー母指では尺側側副靱帯の損傷が多い。
2. 断裂の程度の鑑別は容易である。
3. 側方動揺検査はMP関節を屈曲位で行う。
4. 固定肢位はMP関節を軽度屈曲位とする。

 

 

【解答】 1,3 【柔理5】p.308-309
[柔・各・骨]2.上肢 E.手関節部・手指部の軟部組織損傷 ア
【問題の狙い】第1指MP関節側副靱帯損傷の症状を説明できる。
【解説】
第1指MP関節側副靱帯損傷は臨床現場で多く遭遇する外傷である。
1.スポーツ傷害として、第1指MP関節側副靱帯損傷はスキーヤー母指と呼称され、母指の外転が強制され発生することが多く、尺側側副靱帯の損傷が多い。
2.損傷部位に外傷症状(腫脹、疼痛、圧痛、皮下出血斑など)を認めるが、断裂の程度を判断することは困難である。
3.第1指MP関節の伸展位では側副靱帯が断裂していても副靱帯や手の掌側板が緊張していることから安定性が良いことが多い。そのため、動揺テストを行う際には屈曲位で行う。
4.ステナー損傷は観血療法を適応される。不全断裂では保存療法が適応され、MP関節をアルミ副子で伸展位にて3週間の固定を施行する。

 

 

問題8 施術録の扱いと記載方法で正しいのはどれか。
1. 患者が来院した日付を1か月分まとめて記載した。
2. 同じ文言を何度も記載すると時間がかかるため自分なりの略語にて記載した。
3. 誤って記載したため修正ペンで完全に塗りつぶしその上から書き直した。
4. 施術完結の日から5年以上経過したため破棄した。

 

 

【解答】 4 【柔理5】p.89-90
[柔・総]10.評価・施術録 C.施術録の取り扱い ア イ ウ
【問題の狙い】施術録の取り扱いを説明できる。
【解説】
施術録は療養費請求の根拠となるものであり、正確に記載することは重要である。また、保険者等に施術録の提示および閲覧を求められた場合は速やかに応じることとされているため、調査照会に耐えうる作成が不可欠である。
1.来院した日付は、そのたびに記載する必要がある。
2.略語を用いる場合は、医学用語集に準拠したものとする。
3.記載内容を訂正する場合は、訂正部分に2本線を引き、元の記載が見えるようにして訂正をする。
4.施術録は施術完結の日から5年間保管しなければならない。従って、本選択肢の場合5年以上経過しているため破棄することができる。

 

 

問題9 軟部組織損傷の初期処置で正しいのはどれか。
1. ホットパックを用いた温熱
2. 包帯を用いた固定
3. 患部を心臓より低くした姿勢
4. 擦過傷部に直接絆創膏を貼付

 

 

【解答】 2 【柔理5】p.95-97
[柔・総]11.初期の施術 D.軟部組織損傷の初期処置 ア イ ウ
【問題の狙い】軟部組織損傷の初期処置を説明できる。
【解説】
軟部組織損傷に限らないが、原則として組織内圧上昇の原因となる出血や炎症をいかに最小限に抑えるかが重要となる。最も基本的かつ重要な処置は、RICE、つまりRest(安静)Icing(冷却)Compression(圧迫)Elevation(挙上)である。
1.温熱療法は炎症が消退後から開始することを原則とする。
2.包帯を用いて固定することで、患部の安静、圧迫を行う。
3.患部を心臓より高い位置に保つ。
4.必要に応じて絆創膏固定を行うが、擦過傷がある部分に直接貼ることは避ける。

 

 

問題10 後療法の量に対する指導管理で誤っているのはどれか。
1. 初回量は最大限に実施する。
2. 増量するときは漸増する。
3. 隔日長時間より毎日短時間の方が効果的である。
4. 自宅における運動療法も加算して考える。

 

 

【解答】 1 【柔理5】p.122
[柔・総]12.後療法 B.手技療法 ア C.運動療法 D.物理療法
【問題の狙い】後療法の指導管理を説明できる。
【解説】
後療法の量は強度×持続時間で示される。
1.初回量は最小限にとどめる。
2.増量するときは漸増するが、治療直後と翌日の反応をみて決定する。
3.隔日長時間の施術や運動療法より、毎日短時間の方が効果的である。
4.施術所内の後療法に加えて、自宅における運動療法の量も加算して考える。

 

 

問題11 胸骨骨折で誤っているのはどれか。
1. ハンドルやシートベルトによる直達外力で発生することが多い。
2. 柄体境界部骨折の発生頻度が高い。
3. 横骨折となることが多い。
4. 呼吸時に激痛がみられる。

 

 

【解答】 2 【柔理5】p.149-151
[柔・各・骨]1.頭部・体幹 G.胸骨骨折 ア
【問題の狙い】胸骨骨折の所見を説明できる。
【解説】
1.胸骨骨折は直達外力による発生が最も多く、交通事故でのハンドル損傷やシートベルト損傷は典型的な発生原因となる。
2.体部骨折がもっとも発生頻度が高い。続いて柄体境界部の骨折がみられる。
3.横骨折が最も多く、ときに陥没骨折もみられる。
4.呼吸時に激痛があり、腹式呼吸を行う。また、頭部を前方に下垂し、両肩を前内方にすぼめる疼痛緩和肢位をとる。

 

 

問題12 脊柱屈曲位で尻餅をついた際の椎体圧迫骨折でもっとも多いのはどれか。
1. 第7頸椎
2. 第3胸椎
3. 第12胸椎
4. 第5腰椎

 

 

【解答】 3 【柔理5】p.159-164
[柔・各・骨]1.頭部・体幹 F.頸椎骨折 ア I.胸椎骨折 ア J.腰椎骨折 ア
【問題の狙い】椎体圧迫骨折の好発部位を説明できる。
【解説】
椎体圧迫骨折は、脊柱屈曲位で尻餅をついた際に椎体の圧潰により楔状変形をきたす。胸腰椎移行部がもっとも多く、骨粗鬆症では第6~8胸椎にも発生する。
1.頸椎での圧迫骨折は少なく、急激な筋収縮による骨折や自家筋力による疲労骨折で、第7頸椎の棘突起骨折が多くみられる。
2.上部胸椎は棘突起の疲労骨折が起こりやすい部位である。
3.椎体圧迫骨折は胸腰椎移行部にもっとも多く発生する。
4.下位腰椎では圧迫骨折の発生は少ない。

 

 

問題13 肩甲骨骨折で正しいのはどれか。
1. 上角骨折は前外上方転位をきたす。
2. 下角骨折は上内方転位をきたす。
3. 頸部骨折は解剖頸骨折が多い。
4. 体部骨折では患側の肩に外転制限が起こる。

 

 

【解答】 4 【柔理5】p.189-191
[柔・各・骨]2.上肢 B.肩甲骨骨折ア
【問題の狙い】肩甲骨骨折の症状を説明できる。
【解説】
肩甲骨骨折はまれな骨折であるが、直達外力で発生することが多い。
1.上角骨折は近位骨片が肩甲挙筋の作用で上内方へ転位する。
2.下角骨折は近位骨片が大円筋、前鋸筋の作用で前外上方へ転位する。
3.頸部骨折は解剖頸骨折と外科頸骨折があり、外科頸骨折の方が多い。
4.通常、患者は肩を内転させて来所し、外転制限がみられ、肩腱板損傷に類似した症状を呈する。

 

 

問題14 上腕骨近位端部骨折で正しいのはどれか。2つ選べ。
1. 解剖頸骨折は高齢者に多い。
2. 大結節単独骨折は上腕二頭筋長頭腱脱臼を合併することがある。
3. 小結節骨折は肩関節前方脱臼に合併する。
4. 少年期に生じた近位骨端線離開は肩関節脱臼と鑑別を要する。

 

 

【解答】 1,4 【柔理5】p.194,198-199,295【柔理6】p.234-235,238
[柔・各・骨]2.上肢 C.上腕骨近位部骨折ア
【問題の狙い】上腕骨近位端部骨折の病態を説明できる。
【解説】
1.解剖頸骨折は骨頭周囲の関節内骨折である。高齢者に多い。
2.上腕二頭筋長頭腱脱臼は小結節骨折に合併することが多い。
3.大結節骨折は肩関節前方脱臼に合併し、小結節骨折は肩関節後方脱臼に合併することがある。
4.近位骨端線離開は新生児、乳幼児、少年期に特有な骨折である。少年期に発生したものでは、肩関節脱臼と誤認しないよう注意が必要である。

 

 

問題15 上腕骨顆上伸展型骨折で正しいのはどれか。
1. ファットパッドサイン(fat pad sign)――――― 転位著明な場合に認める
2. バウマン(Baumann)角――――― 整復適否の評価に用いる
3. 傾斜角(TA)――――― 整復不十分な場合は増加する
4. 運搬角(CA)――――― 内反変形の場合は増加する

 

 

【解答】 2 【柔理5】p.205-213
[柔・各・骨]2.上肢 E.上腕骨遠位部骨折 ア
【問題の狙い】上腕骨顆上伸展型骨折の所見を理解できる。
【解説】
上腕骨顆上伸展型骨折は幼小児に好発し、肘関節伸展位で手を衝いた際に発生する。
1.ファットパッドサインは、鉤突窩や肘頭窩にある脂肪組織が関節内骨折による血腫で圧迫されて移動するために現れる透亮像である。
2.バウマン角は、整復直後の整復の適否を評価するのに用いられ、健側と比較する。
3.傾斜角は、上腕骨顆上伸展型骨折で整復不十分の場合に減少する。
4.運搬角は、上腕骨顆上伸展型骨折の後遺症である内反変形を残した場合に減少する。

 

 

問題16 肘関節伸展位で固定するのはどれか。
1. 上腕骨内側上顆骨折
2. 上腕骨外顆骨折
3. 橈骨頭骨折
4. 肘頭骨折

 

 

【解答】 4 【柔理5】p.213-222
[柔・各・骨]2.上肢 E.上腕骨遠位部骨折 ア F.前腕骨近位部骨折 ア
【問題の狙い】上腕骨遠位部骨折および前腕近位部骨折の固定肢位を説明できる。
【解説】
1.上腕骨内側上顆骨折は、肘関節90度屈曲位、前腕回内位で固定する。
2.上腕骨外顆骨折は、肘関節90度屈曲位、前腕中間位~回外位で固定する。
3.橈骨頭骨折は、肘関節90度屈曲位、前腕回外位で固定する。
4.肘頭骨折は、転位骨片への上腕三頭筋の牽引力を除くため、肘関節ほぼ伸展位、前腕回外位で固定する。

 

 

問題17 前腕遠位部の骨折と整復法との組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
1. スミス(Smith)骨折――― 前腕回内位で末梢牽引
2. ショウファー(Chauffeur)骨折
――― 月状骨を支点とし手関節を尺屈
3. 掌側バートン(Barton)骨折
――― 前腕回内回外中間位で末梢牽引
4. 背側バートン(Barton)骨折
――― 前腕回内位で末梢牽引

 

 

【解答】 2,3 【柔理5】p.235-238
[柔・各・骨]2.上肢 H.前腕骨遠位部骨折 ア
【問題の狙い】前腕遠位部の骨折とその整復法を理解できる。
【解説】
前腕遠位部に発生するさまざまな骨折ごとにその発生機序や症状、整復法を整理しておく必要がある。
1.手根部とともに遠位骨片を把握し、前腕回外位で末梢牽引を行って捻転転位、前額面内の側方転位、短縮転位を取り除く。そのまま牽引を緩めずに両示指で近位骨片の背側から掌側に向け、同時に両母指で掌側から背側に向け遠位骨片を直圧して整復する。
2.橈骨の月状骨関節面を支点として手関節を尺屈し、橈側側副靱帯を緊張させて整復する。
3.前腕回内回外中間位で末梢牽引を行い、手関節の屈曲とともに掌側から背側へ遠位骨片を圧迫して整復する。
4.前腕回外位で末梢牽引を行い、手関節の伸展とともに背側から掌側へ遠位骨片を圧迫して整復する。

 

 

問題18 手の舟状骨骨折で正しいのはどれか。
1. 手関節掌尺屈による運動痛が著明である。
2. 結節部骨折では近位骨片の阻血性壊死を生じるリスクが高い。
3. 第2中手骨の骨軸に沿った軸圧痛がある。
4. 母指はMP関節手前までを固定する。

 

 

【解答】 3 【柔理5】p.240-243
[柔・各・骨]2.上肢 I.手根骨骨折 ア
【問題の狙い】手の舟状骨骨折を説明できる。
【解説】
手の舟状骨骨折は手根骨骨折の中で最も発生頻度が高く、中央1/3部(腰部)での骨折が多い。結節部骨折、遠位1/3部の骨折、中央1/3部(腰部)の骨折、近位1/3部の骨折の4型に分類される。手関節捻挫として見落としやすいので注意が必要である。
1.手関節の運動痛は伸展かつ橈屈に際し著明に見られる。
2.舟状骨の栄養血管の多くは背面末梢側から入るので、偽関節や近位骨片に阻血性壊死が起こる可能性がある。特に中央1/3部(腰部)より近位での骨折で生じるリスクが高くなる。
3.第2中手骨だけでなく、第1中手骨の骨軸に沿った軸圧痛もある。
4.固定肢位は、手関節伸展位、軽度橈屈位、手指はボールを握った形で、前腕近位部からMP関節手前までを固定する。特に大切なことは、母指のみはIP関節手前まで固定することである。

 

 

問題19 棘果長に変化がないのはどれか。
1. マルゲーニュ(Malgaigne)骨折
2. 大腿骨頸部内側骨折
3. 股関節腸骨脱臼
4. 膝関節前方完全脱臼

 

 

【解答】 1 【柔理5】p.320-321,323-325,368-370,377
[柔・各・複合]3.下肢 A.骨盤骨骨折 ア B.大腿骨近位部骨折 ア A.股関節脱臼 ア C.膝関節脱臼 ア
【問題の狙い】外傷による下肢長の変化を理解できる。
【解説】
ここでは棘果長の定義と選択肢である各骨折・脱臼の下肢長の変化の理解が必要である。
下肢長の計測には、①棘果長と②転子果長の2つがある。①棘果長は上前腸骨棘と内果を結んだ線の距離である。②転子果長は大転子と外果を結んだ線の距離である。
1.マルゲーニュ骨折は垂直重複骨折のことで、同側の恥骨上・下枝や恥骨上枝と坐骨の骨折に、仙腸関節離開や腸骨後部や仙骨が垂直に重複して骨折している場合をいう。この時、骨盤部の著しい変形や外見上下肢の短縮が証明されるが棘果長は変化しない。したがってこれが正解となる。
2.大腿骨頸部内側骨折は高齢者に多発する骨折で、棘果長は健側に比べて短縮する。
3.股関節腸骨脱臼は後方脱臼の1つであり、交通事故(ダッシュボード損傷)などで発生することが多い。腸骨脱臼では大腿骨頭は寛骨臼の後上方に位置し、屈曲・内転・内旋位に弾発性固定される。大腿骨頭は後方に転位するため下肢は短縮する。したがって棘果長は短くなる。
4.膝関節前方脱臼は膝関節の脱臼中もっとも頻度が高く、多くは完全脱臼となる。完全脱臼では大腿骨顆部の前面に脛骨上縁が接している。したがって棘果長は短くなる。

 

 

問題20 歩き始めたばかりの1歳の女児が、母親が目を離したわずかな隙に転倒して左大腿骨を骨折したとのことである。単純エックス線写真を下記に示す。
発生機序で正しいのはどれか。
1. 膝関節屈曲位で膝を衝いた。
2. 膝関節伸展位で過伸展が強制された。
3. 大腿骨遠位側に外旋力が作用した。
4. 大腿骨遠位側に内旋力が作用した。

 

 

【解答】 1 【柔理5】p.333-334
[柔・各・骨]3.下肢 C.大腿骨骨幹部骨折
【問題の狙い】エックス線写真の知識を応用し、その骨折の状態から発生機序を判断できる。
【解説】
エックス線写真は乳幼児の左大腿骨顆上屈曲型骨折である。
1.本骨折は膝関節屈曲位で膝を衝いて発生し両骨片相互は噛合することが多い。
2.過伸展の強制では顆上伸展型骨折となり、両骨片は離開転位を認めることが多い。
3.大腿骨遠位側に外旋力が作用した場合には遠位内側から近位外側に向けて螺旋状の骨折線を認めるのが一般的である。
4.大腿骨遠位側に内旋力が作用した場合には遠位外側から近位内側に向けて螺旋状の骨折線を認めるのが一般的である。

 

 

問題21 足根骨骨折の部位と発生時の足関節の動きで正しい組合せはどれか。
1. 距骨頸部骨折 ―――― 足関節背屈強制
2. 距骨体部骨折 ―――― 足関節内反強制
3. 舟状骨粗面骨折 ――― 足関節内反強制
4. 舟状骨体部骨折 ――― 足関節底屈強制

 

 

【解答】 1 【柔理5】p.358-364
[柔・各・骨]3.下肢 I.足根骨骨折 ア
【問題の狙い】足根骨骨折の発生機序を理解できる。
【解説】
足根骨骨折は、距骨骨折、踵骨骨折、舟状骨骨折などがある。
1.距骨頸部骨折は高所からの落下で足関節背屈することで発生する。
2.距骨体部骨折は高所からの落下で踵をつき脛骨と踵骨の圧迫で発生する。
3.舟状骨粗面骨折は足部の外転で発生する。
4.舟状骨体部骨折は足関節背屈強制されて発生する。

 

 

問題22 顎関節前方脱臼の弾発性固定に関与しないのはどれか。
1. 外側靱帯
2. 内側翼突筋
3. 外側翼突筋
4. 咬 筋

 

 

【解答】 2 【柔理5】p.135
[柔・各・脱]1.頭部・体幹 A.顎関節脱臼
【問題の狙い】顎関節前方脱臼の弾発性固定に関与する器官を説明できる。
【解説】
顎関節前方脱臼は外側靱帯・外側翼突筋・咬筋により弾発性固定が発現するとされている。

 

 

問題23 胸鎖関節脱臼で誤っているのはどれか。
1. 頭部が患側に傾く。
2. 患側の肩は下垂する。
3. 完全脱臼が多くみられる。
4. 直達外力によるものが多い。

 

 

【解答】 4 【柔理5】p.261
[柔・各・脱]1.頭部・体幹 C.胸鎖関節脱臼 ア
【問題の狙い】胸鎖関節脱臼の症状を説明できる。
【解説】
胸鎖関節脱臼は、前方・上方・後方脱臼に分類される。その中で前方脱臼の頻度がもっとも高く、多くは完全脱臼(3.)となる。発生機序は、肩または腕に対して働く後方への過度の介達外力によって起こる。症状は、患側の肩を下垂して(2.)胸鎖乳突筋の緊張を避けるため頭部を患側に傾ける(1.)。従って誤っているのは4.となる。

 

 

問題24 肩関節前方脱臼で、バンカート損傷を伴わない初回脱臼の肩関節の固定肢位はどれか。
1. 外転位・内旋位
2. 外転位・外旋位
3. 内転位・内旋位
4. 内転位・外旋位

 

 

【解答】 3 【柔理6】p.243-244
[柔・各・脱]2.上肢 B.肩関節脱臼 ア
【問題の狙い】肩関節前方脱臼の固定を説明できる。
【解説】
肩関節前方脱臼は外傷性肩関節脱臼の大部分を占める。整復後は、保存療法の場合は患者に負担のない肩関節3.内転内旋位で固定をする。バンカート損傷がある場合には、反復性肩関節脱臼の予防として教科書には「下垂位での外旋位固定も有効であるとの報告もある」と記載されているが、実際は手術の可能性も含めて意見が混在している。

 

 

問題25 橈骨頭脱臼で正しいのはどれか。
1. 前外方凸の尺骨骨幹部骨折を伴うことが多い。
2. 神経損傷の合併は手指の感覚障害を引き起こす。
3. 後方脱臼が多い。
4. 前腕回内位で固定する。

 

 

【解答】 1 【柔理5】p. 227,275
[柔・各・脱]2.上肢 C.肘関節脱臼 ア D.肘関節付近の骨折を伴う脱臼 ア
【問題の狙い】橈骨頭脱臼の概要を理解できる。
【解説】
橈骨頭単独脱臼は極めてまれで、発生した際には尺骨近位骨幹部骨折を伴うことが多い(モンテギア骨折)。
1.モンテギア骨折は前外方凸の屈曲変形を示す伸展型が多い。
2.橈骨頭の前方に位置する後骨間神経損傷を危惧する。後骨間神経は感覚枝を有さないため、運動障害は生じるが、感覚障害は生じない。
3.前方に脱臼することが多い。そのため後骨間神経損傷を合併することがある。
4.肘関節鋭角屈曲位、前腕回外位で固定する。

 

 

問題26 股関節脱臼で正しいのはどれか。
1. 前方脱臼に対する整復で、回転法は脱臼肢位のまま大腿を大腿骨長軸遠位方向に牽引する。
2. 後方脱臼に対する整復で、牽引法は脱臼肢位のまま大腿を大腿骨長軸遠位方向に牽引する。
3. 整復後2~3日で荷重歩行を開始する。
4. 脱臼後に生じる骨頭の壊死は特発性大腿骨頭壊死症である。

 

 

【解答】 1 【柔理5】p.368-374
[柔・各・脱]3.下肢 A.股関節脱臼 ア
【問題の狙い】股関節脱臼の整復法、治療法や予後を説明できる。
【解説】
1.前方脱臼に対する整復で、回転法は大腿骨を長軸遠位方向に牽引し、牽引しながら徐々に股関節を直角位にし、下肢を内旋しつつ膝・股関節を伸展位にし、この際、助手が大腿骨頭を臼窩の方へ圧迫して整復する方法である。
2.後方脱臼に対する整復法で、牽引法は背臥位で股関節及び膝関節を直角位として、大腿骨長軸遠位方向に牽引して整復する方法である。
3.整復後は関節部の安静と損傷した軟部組織の修復のため、下腿から介達牽引により2~3 週間の安静臥床を要する。
4.脱臼や骨折などの阻血原因が明らかである場合は外傷性の大腿骨頭壊死症であり、これら以外が特発性大腿骨頭壊死症である。

 

 

問題27 膝関節脱臼で正しいのはどれか。
1. 前方脱臼は後方関節包と後十字靱帯(PCL)の断裂を合併する。
2. 後方脱臼の発生が最も多い。
3. 側方脱臼はほとんどが完全脱臼である。
4. 足背動脈の触知可能であれば膝窩動脈損傷を否定できる。

 

 

【解答】 1 【柔理5】p.376-380【柔理6】p.397-399
[柔・各・脱]3.下肢 C.膝関節脱臼 ア
【問題の狙い】膝関節脱臼の病態を説明できる。
【解説】
1.前方脱臼では、膝関節30度過伸展で後方関節包と後十字靱帯(PCL)の断裂、50度過伸展で膝窩動脈損傷が起きると報告されている。
2.前方脱臼が最も多く、次いで後方脱臼である。
3.側方脱臼には内側脱臼と外側脱臼があり、外側脱臼が多く、ほとんどが不全脱臼である。
4.膝窩動脈損傷の合併は30-40%である。足背動脈の触知が可能であっても、必ずしも膝窩動脈損傷を否定できない。

 

 

問題28 膝蓋骨脱臼の形態による分類で誤っているのはどれか。
1. 反復性脱臼
2. 習慣性脱臼
3. 随意性脱臼
4. 恒久性脱臼

 

 

【解答】 3 【柔理5】p.376
[柔・各・脱]3.下肢 D.膝蓋骨脱臼 ア
【問題の狙い】膝蓋骨脱臼の形態による分類を説明できる。
【解説】
膝蓋骨脱臼は外傷により発生する「外傷性脱臼」、外傷性脱臼の後に繰り返し再発する「反復性脱臼」、外傷の既往が無く膝を一定の肢位とすると常に脱臼する「習慣性脱臼」、膝の肢位に関係なく常に脱臼している「恒久性脱臼」に分類される。

 

 

問題29 足関節脱臼で最も多いのはどれか。
1. 前方脱臼
2. 後方脱臼
3. 外側脱臼
4. 内側脱臼

 

 

【解答】 3 【柔理6】p.436
[柔・各・脱]3.下肢 E.足関節脱臼 ア
【問題の狙い】足関節脱臼の分類を説明できる。
【解説】
足関節脱臼は足部に加わる外力の方向で側方(内側、外側)、前方、後方に分類される。その中でも外側脱臼がもっとも頻度が高いが、下腿遠位端部骨折や靱帯損傷を合併することが多い。

 

 

問題30 ショパール関節脱臼で誤っているのはどれか。
1. 多くは不全脱臼である。
2. 前足部が内方に転位した場合は内果付近に舟状骨が突出する。
3. 骨折を伴うことはまれである。
4. 整復は助手が末梢に牽引し、術者はショパール関節部の内・外側から圧迫する。

 

 

【解答】 3 【柔理5】p.380-381
[柔・各・脱]3.下肢 G.足根骨脱臼 ア
【問題の狙い】ショパール関節脱臼の症状や治療法を説明できる。
【解説】
ショパール関節脱臼は極めてまれな脱臼である。高エネルギー損傷、また踵部が固定された状態で前足部に外力が加わった際に生じることがある。
1.多くは不全脱臼を呈する。
2.前足部が内方に転位した場合は内果付近に舟状骨が突出し、距骨・踵骨の前方関節面は外方に突出する。
3.他の足根骨や中足骨の骨折を合併することが多い。
4.整復は第1助手が下腿中央部を把持し、第2助手が踵部、中足骨部を把持した後に末梢牽引を行う。その際に術者はショパール関節部の内・外側から圧迫し、整復する。

 

 

問題31 後療法でパテラセッティング運動が適応しないのはどれか。
1. 習慣性膝蓋骨脱臼
2. 前十字靱帯損傷
3. 変形性膝関節症
4. オスグッド・シュラッター(Osgood-Schlatter)病

 

 

【解答】 4 【柔実】p.355,375【整形】
p.100,126
[柔・各・複合]3.下肢
【問題の狙い】膝周辺部の損傷に対する後療法を理解できる。
【解説】
パテラセッティング運動とは背臥位にて膝窩部にタオル等を入れて、そのタオルを潰すように膝を伸展させる。つまり大腿四頭筋のトレーニング法の1つである。
1.習慣性膝蓋骨脱臼では内側広筋を強化することによって膝蓋大腿関節部の安定を図る。
2.前十字靱帯損傷後は大腿四頭筋の萎縮が懸念されるため、運動療法の1つとして本法は適応である。
3.変形性膝関節症は大腿四頭筋の強化により症状が改善するため、本法は適応である。
4.オスグッド・シュラッター病は膝伸展機構の使い過ぎにより脛骨粗面部に骨性の膨隆または裂離損傷が生じる。後療法は筋力強化ではなく、大腿四頭筋のストレッチングを行う。

 

 

問題32 むちうち損傷で次の①~③の症状から考えられるのはどれか。
① 寝違え症状に類似
② 前腕と手のC7、C8領域の感覚異常
③ スパーリング(Spurling)テストの陰性
1. 頸椎捻挫型
2. 根症状型
3. バレ・リュウー症状型
4. 混合型

 

 

【解答】 1 【柔理5】p.171-174【柔理6】p.182-183
[柔・各・軟]1.頭部・体幹 D.頸部捻挫 ア
【問題の狙い】外傷性頸部症候群(むちうち損傷)の分類を理解できる。
【解説】
外傷性頸部症候群(むちうち損傷)は交通事故などにおける頸椎の急激な過伸展、過屈曲により発生する。
1.頸椎捻挫型は外傷性頸部症候群の軽度なもので約80%を占める。頸部の筋緊張の亢進がみられ、寝違えの症状と類似する。二次的に発症した前斜角筋症候群の症状として、前腕と手のC7、C8領域に感覚異常がみられることがある。
2.根症状型はスパーリングテスト、ジャクソンテストが陽性となる。
3.バレ・リュウー症状(頸部交感神経症候群)型の症状は、後頭部・項部痛、めまい、耳鳴り、視力障害、顔面・上肢・咽頭喉頭部の感覚異常、夜間に上肢のシビレ感などの不定愁訴を主体とする。
4.根症状型と頸部交感神経症候群型とを混合したものである。

 

 

問題33 肩関節周囲に発生するスポーツ障害で正しい組合せはどれか。
1. リトルリーガー肩―――離断性骨軟骨炎
2. ベネット(Bennett)損傷―――上腕三頭筋の牽引力
3. 肩峰下インピンジメント症候群―――小結節と肩峰の衝突
4. SLAP損傷―――前下方の関節唇損傷

 

 

【解答】 2 【柔理6】p.248-253
[柔・各・軟]2.上肢A.肩部の軟部組織損傷 ア
【問題の狙い】肩関節周辺に発生するスポーツ障害を説明できる。
【解説】
1.リトルリーガー肩は少年野球の投手に多く発生する上腕骨近位骨端線離開であり、その病態は疲労骨折である。離断性骨軟骨炎とは関係がない。
2.ベネット損傷は上腕三頭筋の牽引力による関節下結節部の骨棘であり(上腕三頭筋型)、野球歴の長い投手に好発する。
3.肩峰下インピンジメント症候群は肩関節挙上時の大結節と肩峰の衝突が原因となり、同部位にある腱板、滑液包に炎症が生じたものである。
4.SLAP損傷は上腕二頭筋の牽引力によって発生する上方関節唇の裂離である。前下方の関節唇損傷は肩関節前方脱臼に合併するバンカート病変である。

 

 

問題34 神経症状を評価する徒手検査法でないのはどれか。
1. ジャクソン(Jackson)テスト
2. FNSテスト
3. ニュートン(Newton)テスト
4. ルース(Roos)テスト

 

 

【解答】 3 【柔理6】p.472-475
[柔・各・軟]1.頭部・体幹 2.上肢 3.下肢徒手検査 ア
【問題の狙い】神経症状を評価する徒手検査法を理解できる。
【解説】
徒手検査によって痛みや放散痛などの神経症状を呈することを目的とした検査法がある。
1.ジャクソンテストは頸椎部での神経根を刺激し、症状の有無により鑑別する。
2.FNSテストは大腿神経伸展テスト(femoral nerve stretch test)と言い、神経を伸長し上位椎間板ヘルニアの鑑別で行う。
3.ニュートンテストは仙腸関節での病変を鑑別するテストで仙腸関節の疼痛を誘発する目的で行う。
4.ルーステストは肋鎖間隙を狭くした肢位を保持させ腕神経叢や鎖骨下動脈の圧迫による症状を再現させるために行う。

 

 

問題35 正しいのはどれか。
1. リトルリーガー肩はソルター・ハリスⅡ型である。
2. 肩甲基部外側縁での肩甲上神経の摩擦で棘上筋が萎縮をおこす。
3. 凍結肩の炎症期にはサポーターなどで保温を図る。
4. ベネット(Bennett)損傷では肩関節外旋可動域が減少する。

 

 

【解答】 3 【柔理5】p.291-297
[柔・各・軟]2.上肢 A.肩部の軟部組織損傷 ア
【問題の狙い】肩部の軟部組織損傷の症状と発生原因を理解できる。
【解説】
1.リトルリーガー肩は10〜15歳の少年野球の投手に多くみられる骨端成長軟骨板の炎症ないし上腕骨近位の骨端線離開で、形態はソルター・ハリスⅠ型と考えられる。
2.肩甲上神経の絞扼障害は、肩甲切痕部では棘上筋と棘下筋のいずれも萎縮するが、肩甲基部外側縁では棘下筋のみの萎縮となる。
3.凍結肩は腱板損傷や石灰性腱炎などを除外した誘因のない有痛性の運動障害である。その病期は炎症期、拘縮期、解氷期に分類され、炎症期では加温はしないが、保温には注意する。
4.ベネット損傷では肩関節の内旋可動域が減少している。

 

 

問題36 正しい組合せはどれか。
1. マーデルング(Madelung)変形――――橈骨彎曲
2. デュプイトラン(Dupuytren)拘縮――――DIP関節屈曲
3. ボタン穴変形――――PIP関節過伸展
4. スワンネック変形――――DIP関節過伸展

 

 

【解答】 1 【柔理5】p.314-315,316-317
[柔・各・軟]2.上肢 F.手関節部・手指部の変形および腱損傷 ア
【問題の狙い】手関節部・手指部の変形を理解できる。
【解説】
1.マーデルング変形は、橈骨遠位端掌尺側の骨端線早期閉鎖による成長障害で、橈骨遠位関節面が傾斜し手根骨は逆三角形の変形となり橈骨が彎曲する。尺骨は正常に発育するため背側に脱臼し手関節は銃剣状変形を呈する。
2.デュプイトラン拘縮は手掌腱膜の拘縮により生じる指の屈曲拘縮のことをいう。拘縮はMP関節に次いでPIP関節に徐々に生じ完全伸展が制限されていく。DIP関節には屈曲拘縮は出現しない。
3.ボタン穴変形は、PIP関節屈曲、DIP関節過伸展の変形をいう。PIP関節背側が両側索間からボタンがボタン穴から出ているようにみえるためこの名称がついている。
4.スワンネック変形はDIP関節が屈曲、PIP関節が過伸展の変形をいう。白鳥の首に似た形状となるためこのような名称がついている。
したがって正しい組合せは1.となる。

 

 

問題37 背臥位で図のような肢位をとる場合に考えられるのはどれか。2つ選べ。

1. 腸腰筋の拘縮
2. 大腿直筋の拘縮
3. 大腿二頭筋の拘縮
4. 中殿筋の拘縮

 

 

【解答】 1,2 【柔理5】p.389-391
[柔・各・軟]9.軟部組織損傷 A.股関節部の軟部組織損傷 ア
【問題の狙い】股関節屈曲位拘縮の原因を理解できる。
【解説】
図は股関節屈曲位拘縮で骨盤が前方傾斜するため、背臥位で下肢をベッドにつけるようにした際にみられる腰椎の前弯の増強である。
1.2.股関節屈曲位拘縮は、股関節屈曲に関与する腸腰筋や大腿直筋、縫工筋の拘縮により生じる。
3.4.これらの筋の拘縮で、腰椎の前弯が増強することはない。

 

 

問題38 膝関節前十字靱帯損傷で正しいのはどれか。
1. 受傷時、pop音を自覚することは少ない。
2. 相手と接触した際、膝関節に内転、回旋が強制され発生する。
3. 関節血腫による膝関節屈曲制限が出現する。
4. 完全断裂では長期の固定で靱帯の修復が期待できる。

 

 

【解答】 3 【柔理6】p.403【柔実】p.369
[柔・各・軟]3.下肢 C.膝関節の軟部組織損傷 ア
【問題の狙い】前十字靱帯損傷の病態を説明できる。
【解説】
前十字靱帯損傷はスポーツ活動中に多く発生し、原因や症状、治療法などの理解が重要である。
1.受傷時に膝がずれた感覚やpop音(断裂音)を自覚することが多い。
2.相手と接触したことよる受傷を接触型損傷と言い、膝関節に外転、回旋が強制され発生する。
3.損傷後、膝関節に関節血腫などによる膝部腫脹によって膝関節の屈曲制限が出現する。
4.前十字靱帯の完全断裂は修復が期待されないため縫合術や再建術の適応になることが多い。

 

 

問題39 足関節に内がえしが強制された患者が来所した。触診で外果と第5中足骨基底部を結んだ線の中点から2横指前方に圧痛点を認めた。考えられる損傷はどれか。
1. 前距腓靱帯損傷
2. 踵腓靱帯損傷
3. 二分靱帯損傷
4. 上腓骨筋支帯損傷

 

 

【解答】 3 【柔理6】p.436-439
[柔・各・軟]3.下肢 E.足部の軟部組織損傷 ア
【問題の狙い】二分靱帯損傷の圧痛点を説明できる。
【解説】
二分靱帯は踵骨前方突起に始まり、立方骨と舟状骨へ二分する靱帯で、足関節の内がえしで損傷する。圧痛点は外果と第5中足骨基底部を結んだ線の中点から2横指前方に認められる。
1.前距腓靱帯の圧痛点は外果の前方である。
2.踵腓靱帯の圧痛点は外果の後下方である。
4.上腓骨筋支帯は外果の後方で腓骨筋群を束ねており、損傷時には外果の後下方に圧痛を認める。

 

 

問題40 三角骨障害で正しいのはどれか。
1. フットボーラーズアンクルと呼ばれる。
2. 足の舟状骨に出現した余剰骨が原因となる。
3. 足関節底屈で疼痛が出現する。
4. 扁平足との関連性が高い。

 

 

【解答】 3 【柔理6】p.440,441
[柔・各・軟]3.下肢 E.足部の軟部組織損傷 ア
【問題の狙い】足部の軟部組織損傷の概要を説明できる。
【解説】
三角骨障害は距骨の後方に出現する余剰骨が、足関節の底屈時に脛骨遠位端部後縁と踵骨とに挟まれ生じる疾患である。後方型インピンジメント症候群とも呼ばれる。
1.フットボーラーズアンクルは衝突性外骨腫ともよばれ、足関節前面(距骨頸部)に生じる骨棘である。
2.足の舟状骨に出現する余剰骨が原因となる疾患は有痛性外脛骨である。
3.三角骨障害は足関節の底屈時に疼痛が誘発される。
4.扁平足との関連性が高いのは有痛性外脛骨である。

 

 

問題41 患者とのコミュニケーションで適切なのはどれか。
1. 専門用語を用いて説明する。
2. 視線を合わせずに会話をする。
3. 沈黙が生じたら会話を終える。
4. 患者の非言語的な表現を活用する。

 

 

【解答】 4 【柔理6】p.87
[柔・総]2.運動器損傷の診察 A.医療面接 ア
【問題の狙い】医療面接で行う患者とのコミュニケーションを説明できる。
【解説】
患者とのコミュニケーションで患者と信頼関係を築くことができれば、その後の傷病の情報をスムーズに得ることが出来る。
1.専門用語は使用しないよう説明する。
2.相手と視線を合わせ相手の話を聞いている意思を伝える。
3.沈黙において患者が何を話せば良いか考えている場合、話始めるのを待つことが必要である。
4.患者の表情や身振り手振りなどの非言語的な表現は、医療面接において重要な情報である。

 

 

問題42 32歳の女性。草野球チームに所属し、外野手である。1週間前から右肩に倦怠感や鈍痛が続くことから来所した。疼痛は肩関節部全体に認め、肩関節自動運動で外転運動は可能で引っ掛かりは認めないが筋力は低下していた。肘関節屈曲位での前腕回外運動に抵抗を加えても痛みはない。また、上腕を把持し下方への牽引力を加えたところ図のようであった。考えられるのはどれか。
1. SLAP損傷
2. 動揺性肩関節
3. 棘上筋損傷
4. 上腕二頭筋長頭腱損傷

 

 

【解答】 2 【柔理5】p.295
[柔・各・軟]2.上肢 A.肩部の軟部組織損傷 ア ウ
【問題の狙い】肩部の軟部組織損傷の症状の知識を応用し、 病態を判断できる。
【解説】
本問題は問題文と図から動揺性肩関節である。
1.SLAP損傷は投球動作による繰り返し負荷による関節唇の障害である。症状は肩関節運動時の引っかかり感や不安定性を主訴とする。
2.外傷性や反復性というものでなく、関節を構成する組織に明らかな異常を認めない肩の不安定症である。図はサルカス徴候である。
3.腱板損傷(棘上筋損傷)では肩関節自動運動時にペインフルアークサインやクレピタスを認めることができる。
4.上腕二頭筋長頭腱では肘関節屈曲位での前腕回外運動に抵抗を加える(ヤーガソンテスト)と痛みがでることから否定できる。

 

 

問題43 60歳の女性。近所の商店で買い物帰りに荷物を持ちながら歩いていた。昨晩降った雨のため、ぬかるみに足を取られ滑って転倒し、右手を衝いて負傷した。右手首周辺に激痛と腫脹が著明に見られたため、整形外科を受診した。その際の単純エックス線写真を下記に示す。
この疾患で正しいのはどれか。2つ選べ。
1. 橈骨遠位端部に掌側凸の外力が作用して骨折した。
2. 遠位骨片は回内転位をしている。
3. 整復の際には橈骨動脈の損傷に注意する。
4. コットン・ローダー肢位にて固定する。

 

 

【解答】 2,3 【柔理5】p.235-237
[柔・各・骨]2.上肢 H.前腕骨遠位部骨折 ア
【問題の狙い】前腕骨遠位部骨折(スミス骨折)の知識を応用し病態や治療法を選択できる。
【解説】
本症例は買い物後、荷物を持っていて転倒したことや、単純エックス線像から、拳(手背)を衝いて転倒したスミス骨折だと判断できる。
1.手背を衝き転倒した際に、橈骨遠位端部に強い背側凸の屈曲力が作用し骨折をきたしたと考えられる。よって掌側凸ではなく背側凸の外力である。
2.遠位骨片の転位は、掌側、橈側、短縮、回内転位を呈する。
3.整復の際、特に両母指で遠位骨片に圧迫を加える時、橈骨動脈の損傷に注意をする。
4.コットン・ローダー肢位は、関節を高度に掌屈・尺屈・前腕回内の肢位で行う固定で、コーレス骨折の固定肢位に近いが、極端な掌屈は手根管内圧が上昇し、手根管症候群を生じやすい。また、腕橈骨筋の緊張が再転位の原因となるなど、問題点が指摘されている。

 

 

問題44 41歳の男性。最近ウェイトトレーニングを趣味としている。大胸筋を鍛えるために高重量でベンチプレスを行い、バーベルを下ろす際にラックとの間に右第2指の中節骨部を挟んでしまった。
その直後から、腫脹、皮下出血斑および異常可動性を認め、患部は掌側凸変形を呈していた。
この症例の適切な固定肢位はどれか。
1. a
2. b
3. c
4. d

 

 

【解答】 4 【柔実】p.205-207【柔理5】p.245-257
[柔・各・骨]2.上肢 K.指骨骨折 ア
【問題の狙い】手中節骨骨折に関する知識を応用し、固定法を選択できる。
【解説】
本症例は中節骨骨幹部骨折であり、ドアに指を挟むことや、重量物の直撃などの直達外力によって生じることが多い。
骨片転位は、骨折部が浅指屈筋の付着部より近位にあるか遠位にあるかにより異なる。
近位の骨折では、近位骨片は指背腱膜の正中索の作用により伸展され、遠位骨片は浅指屈筋の作用で屈曲されるため、背側凸変形を呈する。
遠位の骨折では、近位骨片が浅指屈筋の牽引で屈曲され、遠位骨片は末節骨が終止腱の作用で背側に牽引され伸展する。このため掌側凸変形を呈する。
したがって、本症例は掌側凸変形を呈していることから、浅指屈筋より遠位での骨折であり、遠位骨片を屈曲して整復後、固定肢位は、手関節軽度伸展位、MP関節、PIP関節、DIP関節とも屈曲位とする。

 

 

問題45 17歳の男子。左股関節が痛いということで来所した。昨日の野球の試合中、盗塁をしたときに強い痛みが出現し走れなくなったという。受傷の状況をさらに詳しく聴取すると、走り出した瞬間に痛みが出現したという。膝を屈曲しながらの股関節の屈曲、外転、外旋力の低下が著明であった。
最も考えられるのはどれか。
1. 腸骨稜裂離骨折
2. 上前腸骨棘裂離骨折
3. 下前腸骨棘裂離骨折
4. 坐骨結節裂離骨折

 

 

【解答】 2 【柔理5】p.319-320
[柔・各・骨]3.下肢 A.骨盤骨骨折 ア
【問題の狙い】骨盤骨骨折に関する知識を応用し病態を判断できる。
【解説】
ここではスポーツ傷害の骨盤骨裂離骨折の知識が必要になる。裂離骨折は、骨盤部の各骨端核閉鎖時期が20歳前後であり、下肢と体幹の筋の付着部であるため強い牽引力が加わることが原因としてあげられる。
1.腸骨稜裂離骨折の多くは外腹斜筋の作用で起こり、野球の空振りなどのねじるような動作で発生する。
2.上前腸骨棘裂離骨折は、縫工筋、大腿筋膜張筋の牽引力により発生し、短距離スタート時などの股関節最大伸展位からの股・膝両関節の屈曲が同時に起こった場合に受傷する。原因筋の作用である、膝を屈曲しながらの股関節の屈曲、外転、外旋力が低下する。
3.下前腸骨棘裂離骨折は、サッカーのキック時などの大腿直筋の急激な収縮や過伸展により発生する。
4.坐骨結節裂離骨折は、体幹前傾姿勢から急激に膝関節を伸展した場合に発生する。ハードルなどのハムストリングスの牽引力によって発生する場合と、チアリーディングなどの大内転筋の牽引力によって発生する場合がある。
したがって2.が正解となる。

 

 

問題46 35歳の女性。病院で頸部リンパ節生検を行った後から、右肩関節周囲の鈍痛、肩こりが1か月程度継続していた。肩関節外転運動は80度で制限され、翼状肩甲が観察された。肩関節屈曲運動時に、肩甲骨内側縁と脊椎棘突起の間に拡大がみられた。関節拘縮や感覚障害は認められなかった。
考えられるのはどれか。
1. エルブ(Erb)麻痺
2. ケルンプケ(Klumpke)麻痺
3. 副神経麻痺
4. 長胸神経麻痺

 

 

【解答】 3 【柔理5】p.174-176【柔理6】p.187-190
[柔・各・軟]1.頭部・体幹 D.頸部捻挫 ア
【問題の狙い】副神経麻痺に関する知識を応用し、病態を判断できる。
【解説】
頸部のリンパ節生検(後頸三角の外科的操作)により副神経麻痺が発生したと考えられる。副神経麻痺が医原性に発生した症例では、僧帽筋麻痺が著明にみられる。肩関節の運動制限、とくに外転運動に制限がみられる。肩関節屈曲運動時、肩甲骨内側縁と脊椎棘突起の間隔が拡大し肩甲骨が外転する。肩関節外転時に翼状肩甲が観察され、前鋸筋麻痺に伴う翼状肩甲とは異なる挙動をする。
1.2.腕神経叢麻痺の上位型をエルブ麻痺、下位ケルンプケ麻痺という。症例とは症状が異なる。4.肩関節屈曲運動時、肩甲骨内側縁と脊椎棘突起の間隔が拡大し、肩甲骨の外転運動が認められたことから長胸神経麻痺(前鋸筋麻痺)の可能性が低い。翼状肩甲は肩関節屈曲運動時に観察される。

 

 

問題47 33歳の男性。起床時より右指の伸展ができなかったので来所した。感覚障害、チネル(Tinel)徴候は認められず、四指の伸展は不能であるが手関節背屈は可能であった。既往として6歳の頃に尺骨骨折の経験を有し治療を受けた。肘関節の屈曲・伸展、前腕回旋運動の軽度の運動障害が残存していたが日常生活に支障はなかったので放置していた。
最も考えられるのはどれか。
1. 肘部管症候群
2. 円回内筋症候群
3. 前骨間神経麻痺
4. 後骨間神経麻痺

 

 

【解答】 4 【柔理5】p.226-228
[柔・各・軟]2.上肢 C.肘部の軟部組織損傷 ア
【問題の狙い】肘部・前腕部の軟部組織損傷に関する知識を応用し病態を判断できる。
【解説】
問題文の手関節背屈は可能で四指の伸展は不能(下垂指)という特徴的な所見と、尺骨骨折の既往から推測するとモンテギア骨折による後骨間神経麻痺が考えられる。尺骨骨幹部の骨折があって橈骨骨幹部に骨折の合併がない場合は橈骨頭の脱臼の存在を疑い精査が必要である。橈骨頭の脱臼看過または再脱臼を起こしたものは、回外筋のフローセのアーケードという橈骨神経が通過する腱弓で、橈骨神経の深枝(筋枝)である後骨間神経が圧迫されて発症する例が多い。特徴的な所見としては、指の伸展、母指外転筋力低下を訴えるドロップフィンガー(下垂指)であり、一般に感覚障害はきたさない。手関節の背屈は、その作用筋である橈側手根伸筋群がフローセのアーケードより近位から枝分かれし圧迫を免れるため可能となる。したがって最も考えられるのは4.の後骨間神経麻痺である。
1.肘部管症候群では尺骨神経が圧迫され鷲手変形やフローマン徴候が出現する。
2.円回内筋症候群では、正中神経が絞扼されて正中神経領域の知覚異常、筋力低下、つまみ動作が不自由となる。
3.前骨間神経は正中神経本幹から分枝する純粋な運動枝で知覚枝を含まない。前骨間神経麻痺では、第1指IP関節と第2指DIP関節の屈曲が不能となる特有のつまみ動作障害(tear drop outline)が出現する。

 

 

問題48 68歳の女性。両側の鼡径部の痛みを訴えて来所した。数か月前から股関節の痛みを感じていたが、最近になって夜間寝ているときも痛みで目が覚めることがあるという。日常生活では、靴下がはきにくいのが気になり、台所での立ち仕事も苦痛を感じるという。整形外科による単純エックス線写真を下記に示す。
この疾患で陽性となる可能性があるのはどれか。
1. トーマス(Thomas)テスト
2. ケンプ(Kemp)テスト
3. FNSテスト
4. ニュートン(Newton)テスト

 

 

【解答】 1 【柔理5】p.387-388【整形】
p.99-101
[柔・各・軟]3.下肢 A.股関節部の軟部組織損傷 ア
【問題の狙い】変形性股関節症に関する知識を応用し、陽性となる徒手検査を判断できる。
【解説】
エックス線写真から、関節裂隙の狭小化、大腿骨頭の扁平化、大腿骨頭部及び臼蓋部の骨硬化像、嚢胞、骨棘を認め、Sharp角が減少しており臼蓋形成不全も認める。
1.トーマステストは股関節屈曲拘縮の有無を確認する徒手検査である。靴下がはきにくい原因としては股関節の屈曲拘縮が考えられ、変形性股関節症では、進行とともに股関節屈曲拘縮を生じるため、トーマステストが陽性となる可能性がある。
2.ケンプテストは椎間孔を圧迫するもので、椎間板ヘルニアに対する疼痛誘発テストである。
3.FNSテストは上位腰椎椎間板ヘルニアの鑑別に用いられる。
4.ニュートンテストは仙腸関節疼痛誘発テストである。

 

 

問題49 30歳の男性。子供の頃からサッカーを続けている。最近、足関節の前面に疼痛が出現し特に足関節を背屈すると疼痛が誘発される。心配になったため近隣の整形外科を受診したところ、単純エックス線写真で距骨頸部に骨棘が認められた。
この症例で正しいのはどれか。
1. 過去に足関節外側靱帯損傷の既往歴があると考えられる。
2. 骨棘の原因は軟部組織の牽引力による。
3. 有痛性外脛骨と診断される。
4. 骨棘はリモデリングにより消失が期待できる。

 

 

【解答】 1 【柔理6】p.440-441
[柔・各・軟]3.下肢 E.足部の軟部組織損傷 ア
【問題の狙い】足部の軟部組織損傷に関する知識を応用し、病態を判断できる。
【解説】
この症例はサッカーの競技歴があること、疼痛部位が足関節前面にあること、足関節背屈で疼痛が誘発されること、単純エックス線写真で距骨頸部に骨棘形成を認めることから、衝突性外骨腫と想像できる。
1.衝突性外骨腫の多くは過去に足関節外側靱帯損傷の既往があり、足関節の不安定性が生じている状態での運動継続によって、距骨頸部と脛骨前縁が衝突し骨棘が形成される。
2.骨棘の原因は距骨頸部と脛骨前縁の衝突である。
3.有痛性外脛骨は足の舟状骨に生じた余剰骨が原因となる疾患で、足関節内側部に疼痛を認める。
4.骨棘の消失は期待できず、保存療法で効果がない場合や日常生活に支障が出る場合などは観血療法による骨棘切除が選択されることもある。

 

 

問題50 22歳の男性。1か月前に柔道の試合中で相手の袖を掴もうとした際に振り払われ、指を痛めた。大した痛みではなかったため、そのまま放置していた。最近になって痛みはないが環指の指先が曲げきれない、そのため力が入りづらいことを自覚し、接骨院に来所した。柔道整復師の所見では環指に一般外傷症状は見受けず、軋轢音も触知できなかった。手指の感覚障害も認めないが、環指の自動屈曲・伸展を指示すると伸展は可能だが屈曲時はDIP関節のみ屈曲できなかった。
この症例で正しいのはどれか。
1. 求心性収縮時に発生し易い。
2. 他動でのDIP関節屈曲は不能である。
3. 前骨間神経麻痺と鑑別を要する。
4. 治療は小指とバディテープで固定する。

 

 

【解答】 4 【教科書外】
[柔・各・軟]2.上肢 F.手関節部・手指部の変形および腱損傷 ア
【問題の狙い】屈筋腱損傷に関する知識を応用し、病態および治療法が判断できる。
【解説】
本症は受傷機転、症状より深指屈筋腱断裂(ラグビージャージフィンガー)が疑われる。
1.腱損傷は遠心性収縮時に発生し易い。この問題では相手の袖を掴もうと屈筋群が収縮している際に相手に振り払われ、同部に遠心性収縮が働いたと考えられる。
2.DIP関節の屈曲は自動では不可だが、他動は可能である。
3.前骨間神経は長母指屈筋、示指・中指の深指屈筋を支配しているため第1~3指で受傷した場合は鑑別を要する。
4.環指は小指が屈曲すると環指も屈曲するなど協調運動が懸念される。これを防ぐため小指とバディテープで固定する。

 

 

問題51 50歳の男性。はしごに上って庭の植木を剪定していたところ、バランスを崩してはしごから落ちた。右足で着地をしたときに足部に激痛が走り、そのまま倒れこんだ。その後、足部の腫脹がひどくなり、右足を地面につくことができなかったため来所した。自覚症状として、疼痛のため右足を地面につけない。他覚症状として、皮下出血斑が踵部両側と足底にあり、他動的に足部の回内・回外運動を強制させると激痛があった。足関節を自動で底屈させるときには、疼痛はあるものの強い屈曲制限はなかった。ナウマン徴候はみられなかった。
この患者の指導として正しいのはどれか。
1. テーピング固定で様子をみましょう。
2. ギプス固定をしますがエックス線検査をする必要はないでしょう。
3. 手術になることもありますので、整形外科を紹介します。
4. 特に後遺症は残らないでしょう。

 

 

【解答】 3 【柔理5】p.361-363
[柔・各・骨]3.下肢 I.足根骨骨折 ア
【問題の狙い】踵骨骨折に関する知識を応用し、病態を判断できる。
【解説】
症例は右踵骨骨折である。高所から飛び降りたという受傷機転があること、患者は患側を地面につくことが出来ないこと、皮下出血斑の位置などから、踵骨骨折の可能性が高い。他動的に動かした際に、足部の回内・回外動作で激痛があったこと、また自動で足関節底屈ができたことから、踵骨体部骨折で関節面に骨折が波及していると考えられる。
踵骨体部骨折、さらには関節面に骨折が波及していると疑われる患者が来所した場合を考えると、1.2.ギプス固定をし、完全免荷をしたうえで整形外科にエックス線検査を依頼する必要がある。その際、エックス線検査で関節面に骨折が波及していることが確認されたら、3.手術の適応となる可能性がある。また、4.変形治癒となり外傷性扁平足などの後遺症を呈することがあるため、注意して管理しなければならない。

 

 

問題52 36歳の男性。1か月前に近所のイベントで餅つきに参加していた。不慣れなため何度か力任せに振り上げた杵を臼の縁に当ててしまい、手掌部を痛めた。翌日、物を握ろうとすると痛みが強く、また腫れていたため接骨院に来所した。柔道整復師の所見では手根骨尺側を中心に腫脹が強く、手関節尺屈位で環指、小指に抵抗を加えて屈曲させると疼痛が増強した。骨折の固有症状は認めなかったが手根骨骨折が疑わしいため、近隣の整形外科を紹介した。しかし仕事が忙しかったため、整形外科には受診せず、市販の湿布を貼って様子をみていた。最近になって痛みはだいぶ軽くなってきたが第4、5指に力が入りづらいことを自覚した。
この症例を改めて調べるにあたり誤っているのはどれか。
1. 骨折時に深指屈筋腱断裂を合併している可能性がある。
2. フローマン(Froment)徴候の有無を調べる。
3. 神経損傷を合併している場合では第4、5指DIP関節の屈曲力は低下する。
4. 母指内転筋の筋力低下の有無を確認する。

 

 

【解答】 3 【柔理5】p.245,313
[柔・各・複合]2.上肢 I.手根骨骨折 ア
【問題の狙い】有鉤骨鉤骨折に関する知識を応用し、合併症を判断できる。
【解説】
本症は受傷機転、症状より有鉤骨鉤骨折が疑われる。有鉤骨鉤はギヨン管の形成に関与しているため、この部の骨折はギヨン管症候群を引き起こすことがある。
1.浅指屈筋腱、深指屈筋腱損傷は併発症として生じる場合、続発症としても生じることがあるため、損傷の有無を確認する必要がある。
2.ギヨン管症候群の合併も考え得るため、尺骨神経を対象としたフローマン徴候の有無を確認することは正しい。
3.第4.5指DIP関節の屈曲は深指屈筋が司る。神経は前腕部で分岐しているため尺骨神経高位麻痺でみられる所見である。
4.母指内転筋は尺骨神経支配のため筋力低下の有無を確認する必要はある。

 

 

問題53 18歳の女性。バスケットボールの試合に励み練習をしていたが、約1か月前から右膝部前面に疼痛を自覚し、数日前から膝関節屈伸時に何かに引っかかる感じと同部の違和感や疼痛が増加したため来所した。膝蓋骨内側下縁部付近を軽く押さえながら膝関節を屈伸すると明らかなクリック音を触知し、同部に圧痛を認めた。膝関節の不安定性は認めなかった。
考えられるのはどれか。
1. 腸脛靱帯炎
2. 鵞足炎
3. 滑膜ヒダ障害
4. 分裂膝蓋骨

 

 

【解答】 3 【柔理6】p.406-408
[柔・各・軟]3.下肢 C.膝関節の軟部組織損傷 ア
【問題の狙い】膝関節の軟部組織損傷に関する知識を応用し、病態を判断できる。
【解説】
滑膜ヒダ障害(タナ障害)は膝蓋内側滑膜ヒダが膝の屈伸で内側膝蓋大腿関節内に挟まれ疼痛を主とする症状を呈する。
1.腸脛靱帯炎は走り過ぎなどのオーバーユースにより膝関節外側上部の圧痛と運動痛を認める。
2.鵞足炎はオーバーユースによって起こる脛骨粗面の内側部の縫工筋や薄筋、半腱様筋の付着部の炎症である。
3.滑膜ヒダ障害は上記に加え、膝蓋骨内下縁の疼痛や違和感、同部の圧痛、膝関節の屈伸時のクリックの触知などを認める。
4.分裂膝蓋骨は膝蓋骨外側上部に小さな骨片として存在することが多い。

 

 

問題54 29歳の独身女性。IT関係の仕事に従事しているが、不規則な勤務形態でストレスを感じている。2~3年前より母親から就寝時に歯ぎしりが強いと指摘を受けていた。咀嚼時の疼痛と過度の開口時には雑音を認めるため、以前受診したことのある接骨院に相談したところ、口腔外科への受診を勧められ、診察時にこれ以上病態が進行すると開口に制限が生じる可能性が高いため、就寝時にマウスピースを装着するように指示を受けた。エックス線写真では関節端の変化は認められないとのことである。
現在の病態で正しいのはどれか。
1. 顎関節症Ⅱ型
2. 顎関節相反性クリック(Ⅲa)型
3. 顎関節クローズドロック(Ⅲb)型
4. 顎関節Ⅳ型

 

 

【解答】 2 【柔理5】p.141-143
[柔・各・軟]1.頭部・体幹 A.顎関節症
【問題の狙い】顎関節の運動に関する知識を応用し、病態を判断できる。
【解説】
顎関節の病態は日本顎関節学会により病態による分類がなされ、顎関節症Ⅰ型は「咀嚼筋障害」、顎関節症Ⅱ型は「関節包・靱帯障害」、顎関節症Ⅲ型は顎関節内障すなわち「関節円板障害」とされ開口時の雑音と共に制限が解消するものを「相反性クリック型」更に進行し開口時に雑音も認めずに制限が解消しない状態を「クローズドロック型」とし、咬合の異常や就寝時の歯ぎしりが原因とされている。更に関節端に変化が生じると顎関節症Ⅳ型「変形性顎関節症」、原因を特定できず「心因的因子」が推測されるものを顎関節症Ⅴ型としている。本症例は開口時の雑音と共に制限が解消することから、顎関節相反性クリック(Ⅲa)型と推察する。

 

 

問題55 20歳の男性。キックボクシングの選手である。練習中に相手のキックを右下腿で受けたが受け損ねてしまった。しばらくしても、症状が軽快しなかったため、現場にいた柔道整復師が対応した。
右前脛骨筋部の疼痛が著明で右第1指と第2指の間の感覚障害を認めたが、足背動脈の拍動は触知できた。
最も適切な応急手当はどれか。
1. 炎症に対しアイシングを行う。
2. 仰臥位にて患部を挙上させる。
3. テーピングにて圧迫する。
4. 足関節を他動的に底屈させる。

 

 

【解答】 1 【柔理5】p.410-411
[柔・各・軟]3.下肢 D.下腿部の軟部組織損傷 ア
【問題の狙い】下腿部コンパートメント症候群に関する知識を応用し応急手当を選択できる。
【解説】
本症例は急性下腿部コンパートメント症候群である。疼痛部位から傷害部分は前方筋区画であると考えられる。
1.急性下腿部コンパートメント症候群の応急手当はRICEのうち安静と冷却のみである。
2.急性下腿部コンパートメント症候群の応急手当は血流減少を助長するため、患部を挙上させない。
3.急性下腿部コンパートメント症候群の応急手当は血流減少を助長するため、テーピングで圧迫しない。
4.急性下腿部コンパートメント症候群の特長的な症状に筋伸張痛があり、障害区画内の筋伸張にて疼痛が増大する。

 

 

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